社会派ブロガーちきりん「未来なんてあると思う? もっと今を楽しもうよ」
― 有名人が告白 震災で変わった「私の生き方」 【7】 ―
阪神大震災、オウム事件、9・11――。これらの出来事と今回の東日本大震災の一番の違いは“当事者感覚”の有無だろう。東京から明かりが消え、余震が続いたなか、人々は原発の情報収集に奔走したからだ。そんな状況を経て、各界著名人の価値観はどう変わったのか?
◆電車が遅れても出社を間に合わせるより、キリギリスで生きません?
ちきりん (ブロガー)
私は茨城県の某役所で講演しているときに震災に遭いました。会場はビルの7階だったんですが、もうプロジェクターが机から落っこちるようなひどい揺れで、即刻講演は中止。館内放送に従ってすぐに外に出ました。そこから何とかつくば駅まで辿り着きましたが、東京に向かう電車やバスはすべて止まっていて、コンビニも閉まっていました。ケータイも繋がらない状態で、外部から情報も得られず、どうにもなりませんでしたね。結局その日はホテルのロビーに泊まらせてもらったんですが、衝撃的だったのはそこで観たテレビです。ロビーにいる100人近くの人と津波の映像を観ていたんですが、誰も一言も発しないんですよ。おそらく皆、ここで初めて「これは恐ろしいことが起こったぞ」と感じたんだと思います。地震はだいたい一番怖いところが最初にガツンとくるじゃないですか。でも、津波には何十分かけて流される恐怖があります。その長時間にわたる恐怖が自分の地震の記憶と重なって追体験で迫ってくるわけです。最後まで観ることはできませんでしたね。
帰宅できたのは翌12日の夕方頃ですが、途中の上野駅で見た、東北に向かう人の行列が印象的でした。誰も文句を言っていないんですよね。もう、圧倒的に秩序立っていて、心底「日本ってスゴイ!」と感じました。「悪いことしたら罰せられる、善いことしたら報われる」という社会構造の教育が徹底している。この日本の特徴は、世界的に見ても本当にミラクルだと思いました。
この震災を通して、私の人生観……「未来なんてあると思う? それよりも、もっと今を楽しもうよ」という考えがより強固になりました。人生がいつ終わるかわからないということは、今回の震災で私だけじゃなく、多くの人が感じたと思います。
今の日本の社会は『アリとキリギリス』の寓話でいうところのアリを評価します。将来のために我慢する社会です。その我慢の先の何かを得る前に災厄に呑み込まれるなら、キリギリスとして生きたほうが超ハッピーだと思うんですよね。皆、真面目すぎるんです。夜22時に「明日電車止まります」と言われたら、出社に間に合うように早く家を出たり。そんな国民、世界中探してもいませんよ。むしろ滑稽すぎて、ジョークにされちゃうレベルです。
完璧な社会を求めるから電力の問題に対してもヒステリックになるんです。アメリカなんて電圧が不安定だから、ネットをしてても画面が揺れるんですよ。「えっ?日本はネットしてても画面が揺れないの?」って驚かれるくらいアバウトなんです。
何かを我慢して将来に積み重ねるだけじゃなくて、もうちょっと緩く考えてもいいんじゃないかなって思います。
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