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「1時間以上ビンタされ続けたことも」父親から虐待を受け続けた25歳女性。彼女を救った「担任の一言」

 本来子どもの成長において、親の存在は必要不可欠。ただ、子どもに悪影響を及ぼす“毒親”と呼ばれる親もいる。この言葉は世間に浸透しつつあるが、実態を知るものはどれだけいるだろうか。 「暴力、教育虐待、性的虐待、経済的虐待……すべてのジャンルの虐待を、実父と継父から経験しました」と話す25歳女性のumiさんに、毒親被害を赤裸々に語ってもらった。今回は実父による虐待を聞いていく。

umiさんが経験した痛ましい過去

毒親インタビュー

毒親被害者のumiさん

「実の父からの身体的な暴力が始まったのは、小学生になってからのことでした。勉強は好きだったのですが、算数だけはどうしても苦手で、うまくできないと耳に爪楊枝を入れられたりもして……。『痛い!』と嫌がったり反抗的な態度と見なされると、押し倒されて馬乗りになって1時間以上ビンタが続きました」  優しげなたれ目のumiさんは、痛ましい話とは裏腹に淡々と話し始める。 「実の父は、母にも兄弟にも全員に暴力をふるっていました。母は熱いアイロンを思い切り腕に当てられたこともあります。母はフィリピン人なんですが、日本のフィリピンパブに出稼ぎに来て、まだ日本語が流暢には話せない。簡単な形容詞しか言えない、みたいな。  20歳年上の父には言葉でも力でも勝てることはなく、母はまるで父の金魚のフンでした。私の一番幼い記憶では、両親の喧嘩の末に、母が手から血を流していたことです。父は母と結婚したときにはすでにバツイチで、できちゃった婚だと思います」  周囲を伺いながら言葉尻をすぼめるumiさん。フィリピンから出稼ぎにきた20歳そこそこの女性を、20歳年上父は妊娠させた。どんな背景を持つ人物なのか。 「自分で妊娠させておきながら、『デキちゃったから仕方なく結婚した』と言っていました。父と母は私が5年生のときに離婚をしているし、祖父母ももう他界しているので、あまり父の生育環境を知らないんですけど、日生学園を卒業しているということだけは聞いたことがあります」  日生学園とは、三重県にある「超スパルタ」と噂に聞く全寮制の高校だ。お笑い芸人、ダウンタウンの浜田雅功氏が卒業していることでも知られている。

父からの精神的な虐待も…

 そんな父からは精神的虐待もひどかったという。 「私が小学生のとき、担任の先生に嫌われていて。保護者面談で『娘さんは、何をやってもダメですね』って先生が父に言ったみたいなんです。家で顔を合わせるなり、『お前は俺の子じゃない!出ていけ!お前なんかを子どもに持って本当に恥ずかしい!』という、罵声を浴び続けました。『お前なんていらないんだよ』と、ことあるごとに言われてきたので、お父さんに殴られるのも、お母さんがヒステリックを起こすのも『全部自分が悪いからだ』と心底思っていましたね……」  また、これが「家族の形として世間一般的だと思っていました」ともポツリとこぼす。“自己肯定感”という言葉で、しばしば人の分析がなされることがあるが、彼女は自らを肯定はおろか、否定しかしてこなかった。幼い子どもなら当たり前に受け入れられるはずの「字をきれいに書いた」「母の日の制作物でお母さんを可愛く描いた」「テストで100点を取った」といったことは、努力も空しく「あ、そう。片付けといて」の一言で終わった。 「親から期待に応えてもらったこと……ないですね。両親ともに一事が万事、そんな感じだったので。でもやっぱり、どんなに酷い仕打ちを受けても親なんですよ。私にとって、“認められたい”存在なんです。『もっと上手にできればよかった』『褒められるにはもっと頑張らなくちゃいけない』という気持ちを捨てきれずに、だけどその思いは成就することはなく、理想と現実のギャップに心がバラバラになっていきました」
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誰にも相談できない状況に……
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会社員兼ライター、30代ワーママ。世の中で起きる人の痛みを書きたく、毒親などインタビュー記事を執筆。

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