赤羽・呑んべえの聖地で飲める「メニューにない酒」とは
―酔っ払いの達人・大竹聡オススメの名店 その8―
週刊SPA!にて連載中の「アホほど飲むな!」。『酒とつまみ』元編集長・大竹聡氏が、アホほど飲んじゃった愛すべき人々のおりなす人間模様を綴ったエッセイなわけですが、当欄では大竹氏「オススメの名店」についても少し紹介しています。
そこで日刊SPA!では、誌面に載った名店の魅力について、より詳しくご案内していきたいと思います。
◆時計の針が定まらない感覚を味わえる
8軒目は、本誌で不定期連載中の人気マンガ『孤独のグルメ』に登場した店のモデルにもなった、鯉とうなぎの「まるます家」。赤羽の地で、朝9時開店を50年以上続けている老舗なのだ。
通常、この記事の撮影と取材は、お客さんにできるだけ迷惑をかけないよう、開店前かお客さんの少ない時間帯にお願いしている。店長の松島さんが「じゃあ、14時くらいにしましょうか」ということで、指定された時間に店に伺うと、40席ほどあるコの字型カウンター2つとテーブル席にはお客さんでいっぱいで、いきなり面食らう。平日のしかも真っ昼間だ。「空いている時間帯でも7割は埋まりますね」と若女将も笑っている。
店内には、「昼だけどたまにはいいよね」と言い訳しながら酒を飲む若いサラリーマンや「一体、何時から飲み続けているんだろう?」といういい顔をしている有閑老人、謎なカップルなどさまざまで、この光景を見ていると、酒を飲む前から(いい意味で)クラクラしてくる。また注文を取り仕切る6人の女性店員さんたちの無駄のない動きと元気なかけ声も気持ちいい。
◆元祖「焼酎モヒート」をさらに美味しく味わう裏ワザ
注文したのは、「生ゆば刺し」(500円)と「牛すじ煮込み」(450円)、「うなぎの蒲焼」特上(1800円)。ゆば刺しは紅葉おろしポン酢でいただくのだが、ゆばに巻かれたあさつきの歯ごたえがキュッキュとしていい。醤油ベースの牛すじ煮込みは、味がこっくり滲みている。名物のうなぎの蒲焼は、小ぶりながら身はふっくら、脂もしっかりのっていて、丼でガツガツもちょっとつまむにも気分にまかせて頼みたい。
ココに来たら挑戦してほしいのが、「ジャン酎モヒート」(1050円)だ。著者の大竹聡氏が、「アホほど飲むな!」で書いていたように、まるます家は、“元祖・焼酎モヒート”の店。昨年の夏頃、若女将が、家飲み用に酎ハイをつくったときに、「レモンのかわりにライムとミントを入れてみよう」と思い立ち、始めたのだという。「ジャン酎」とは、ジャンボ酎ハイの略で、ハイリキ・プレーン(1ℓ・950円)にライムとミントを加え、モヒート仕立てにアレンジしたものが「ジャン酎モヒート」。最初は「モヒートって何?」というビール、焼酎党だったおじさんたちも今ではよく注文するのだとか。
「コレにアンゴスチュラ・ビターズ(薬草や香草、香辛料などを酒に付け込んで作るベネズエラで生まれた苦味のあるアルコール)を数滴垂らすとまた味がかわりますよ」と若女将。やってみるとすっきりとした爽やかな味わいから独特の香りが鼻を抜け、コクが出てくる。特にメニューには書いていないので、店員さんに直接「アンゴスチュラ・ビターズを」とお願いしてみるといいらしい。
純粋に美味しい料理がいただける店だが、単調な日常を抜け出したいとき、ちょっと羽目を外したいときは、ぜひ赤羽まで足をのばしてみてほしい。ただし、「まるます家約束 お酒類一人3本まで!」(店内貼り紙より)。
⇒まるます家【画像一覧】はコチラhttps://nikkan-spa.jp/?attachment_id=338745
「まるます家」
【住所】東京都北区赤羽1-17-7
【電話】03‐3902‐5614
【営業】9:00~21:30(ラストオーダー21:00)
【定休】月曜日(祝日の場合は翌日)
<撮影/与儀達久 取材・文/おはつ(本誌)>
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