タクシー・ドライバーに聞く【非常識な迷惑客たち】
―[本当にあったタクシー・ドライバー]―
見ず知らずの人を乗せ、車という密閉空間で時間を共にするタクシードライバー。車内という閉ざされた空間は、たった数分であっても様々なドラマを引き起こすという。今回はそんなタクシードライバーの方々が実際に遭遇した悲喜交々の四方山話を集めてみた
◆非常識な迷惑客たち
ドライバーを悩ませる迷惑客。なかには暴行、強盗事件に発展することもあり、ドライバーたちの悩みのタネである。
「正直、明け方の歌舞伎町は苦手ですね。特にタチが悪いのは酔っ払ったホストですね」
と語るのはタクシードライバー歴20年を数えるベテランの個人タクシー運転手だ。
「若いホストってカネがないんですよ。でも、電車に乗れないくらいにベロベロに酔っ払うんです。そうなるとタクシーなんですが、もちろんカネはない。平気で運賃を踏み倒そうとしますよ」
その手口は強引かつ、狡猾である。
「まず行き先を告げてくるんだけど、その言い方が曖昧。道順を聞いても酔ったふり(?)をして、適当に相づちを打ってきます。そしていざ目的地に着いて金額を伝えると『いつもはもっと安い』とか『道を間違えてるぞ!』と言って脅してきます。以前あったのは、目的地の周辺まで来たら一方通行の道を指して『ここを曲がれ』って言うんですよ。それで一方通行だから行けない旨を伝えて迂回したところ『値段が大幅に上がったから割り引け!』って。法人タクシーのドライバーはビビって『お代はけっこうです』って言う人多いんだろうね。でも、私は個人なので、ココで引いたら取りっぱぐれるだけ。こういうことで揉めた場合はすぐに警察を呼ぶようにしています。警察を呼ぶと大半はおとなしく払いますね」
彼によると、こうした輩は一度“オイシイ思い”をしてしまったから、犯行を繰り返すのだという。だからこそ、「毅然とした態度で向き合わないとダメですよ!」という。だが、さらに狡猾な手口で無賃乗車をしようとする者もいる。
「私たちドライバーは酔っている方など、どういう状況であれ『お客さまに触れてはいけない』ことになっているんです。酔って眠ってしまったお客さまなどを揺り起こすのもダメですね。そういう場合は近くの交番に行くか、警察を呼ぶように指導されています」
こう語るのは、40代のドライバーだ。彼によると、こうしたタクシー業界の決まり事を逆手に取られたことがあったという。
「キャバクラの女性とホスト風の男性カップルなんですが、目的地に着いて女性が私にお金を払ったんです。その際、おつりを渡そうとした手が女性の手に触れたんですよ。そうしたら女性が『触っただろ!』と激昂。男性も『てめぇどういうつもりだ!』って。こちらはひたすら謝ったんですが、『あんたら客の体に触っちゃダメなんだろ?』とか『会社に知れたらクビじゃねぇのか?』って脅し始めたんですよ。それで、あ、こいつらは常習だなと思いました」
だが、そこで要求に応じなかったのはこのドライバー氏のすごいところだ。
「まぁ、私も若い頃、けっこうヤンチャしてましたもんで、ちょっと頭に血が昇っちゃったんですね。『おう、別にクビでもかまわねぇよ。通報するならしてみろや。俺もそん時ゃ考えがあるぞ!』って。そしたら向こうが急に謝りだしましてね。カネないんだろう?って聞いたら、二人揃って頷くもんだから、私も『まぁ、これからはセコいことすんなよ』って一言叱って、帰してやりました」
さらに彼は続ける。
「タクシーの運転手ってね、社会でつまづいたり、はみ出しちゃった人がけっこう多いんです。あんまり無茶なことをやられると、プッツンしちゃう人が出てくるかもしんないですね」
とのことだ。だが、なかには手に負えない、とんでもない事件に巻き込まれることもあるという。
⇒『40代のドライバーの体験談を紹介』に続くhttps://nikkan-spa.jp/339838
― 本当にあったタクシー・ドライバーの話【2】 ― ―[本当にあったタクシー・ドライバー]―
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