円暴落論はさすがに気が早過ぎる理由
<資料1>はドル円と適正価格の目安である購買力平価のグラフを重ねたもの。これを見ると、ドルは1980年代後半以降、日米卸売物価で計算した購買力平価が基本的に上限となってきました。つまり、ドル高・円安は目一杯進んでも卸売物価基準の購買力平価を大きく超えないというのが、過去四半期世紀の常識だったわけです。
※<資料1>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=345993
そんな卸売物価基準の購買力平価は足元95円程度。これを10%以上ドルが上回ったのは2007年6月に120円を大きく超えるドル高となった局面でした(<資料2>参照)。今回も同じぐらい購買力平価を上回るドル高・円安になっても、せいぜい110円程度という計算です。
ここにきて、円高から円安への基調転換が始まっているとの見方が増えるなかで、日本の経常赤字国化などを織り込んだ動き、経常・財政「双子の赤字」とされた米国の二の舞、さらにはギリシャ化への警戒論など、円暴落が始まっているのではないかといった不安も、早々と聞こえ始めました。
ただ、<資料2>を見ると、購買力平価は基本的にドル上限といいながら、徐々に上ぶれ率が拡大していることがわかります。購買力平価よりドル高・円安になる動きが、すでに長い時間をかけて広がってきたわけなので、今回はドルが購買力平価を2割以上も上回る120円程度まで上昇する可能性はあるのかもしれませんが、そこまでは「普通の円安」であり、突然の円暴落、「悪い円安」というのとは違うのではないでしょうか。(了)
※<資料2>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=345994
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
●ツイッター http://mobile.twitter.com/yoshida_hisashi
●毎週動画 http://www.m2j.co.jp/fx_channel/
●FXの学校「アカデミア」 https://www.m2j.co.jp/mp/my_fxacademia/
円高から円安へ基調が転換したとの見方が増えるなかで、今度は円暴落が始まっている可能性を警戒する不安も一部に聞こえてきました。ただ、それはまだ大丈夫ではないでしょうか。
◆「普通の円安」と「悪い円安」の境目とは?
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