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進化したCR-Z 3リッター並みの加速に快感

 国産のライトスポーツカーといえば、マツダの「ロードスター」やトヨタ/スバルの「86/BRZ」が代名詞だが、ハイブリッドスポーツカーという新境地をホンダの「CR-Z」が開いたことを忘れてはならない。そんなCR-Zが、初の大掛かりなマイナーチェンジを敢行し、86/BRZに対する競争力強化を図っている。見た目こそ、最近のマイナーチェンジのセオリーにのっとって大幅に変更された部分はないが(それでもカッコ良くなっている)、そのぶん中身は劇的に進化した。これはマイナーチェンジというレベルではない。

「Honda Sports & Eco Program」

 最大の進化点は、リチウムイオン電池を国内のホンダ製ハイブリッドカーでは初搭載したこと。従来搭載されていたニッケル水素電池から、電圧と出力で144%の向上を達成しながら、重さは同じ20.2kg。容積にいたっては97%と3%も小さくなった。加えて、エネルギー密度が2.2倍になったことに合わせて、ハイブリッドカーの神髄であるモーターも14馬力から20馬力へと高出力化。エンジンは、ホンダのお家芸である1.5リッターi-VTECエンジンを1バルブ休止タイプからロー/ハイ切り替え式の本気タイプに切り替えることで、6600回転まで常用できるようバージョンアップされた。結果、エンジン出力は6速MTモデルで114馬力から120馬力(CVTモデルは118馬力)となり、モーターとエンジンをミックスしたシステム出力(単純合算ではない)は、136馬力(同135馬力)と従来比で12馬力もアップした。

 数字ばかりを並べてもアレなのでわかりやすく説明すると、車体の重量はほとんど変わらなくて、これだけパワーアップしたことから“スポーツカー度合い”は確実に2ランクアップしている。参考までに0~100km/hの加速タイムは、6速MT/CVTともに約13%改善されている。しかも「スポーツカーにもエコ」の精神を貫くホンダは、燃費性能も真剣にチューニング。カタログ燃費でいえば6速MTモデルはイーブン、CVTモデルにいたっては1%改善した。たった1%でもバカにできない。同じ質量のものを13%も速く走らせたにもかかわらず燃費数値がいいというのは、正直スゴイことなのだ(私自身、参戦中の「Honda Sports & Eco Program」で経験済み)。

 そんな進化したCR-Zの走りはどうかというと、ホンダはやっぱりヘンタイ技術者の集団だと改めて痛感する出来栄えだった。これだけ正常進化させてるわけだから走りが悪くなるわけないのに、それだけじゃつまらないと思ったらしく、新たに「PLUS SPORTシステム」を全車に標準装備している。簡単にいうと、F1の加速システム「KERS」みたいな考え方を、パワーアップしたハイブリッドシステムのCR-Zで実現した。ステアリングの右下にある「S+」ボタンを一定条件下で押して、5秒以内にアクセルをちょっとだけ踏み増す(踏み直す)と、アクセルはすぐに全開になり、モーターアシストは瞬時にフルアシスト。さらにCVTレシオ(ギヤみたいなもの)も一気に加速側へ働く。実はCR-Zには、従来から「3モードドライブシステム」が装備されていて、そこにもスポーツモードがあるが、「PLUS SPORTシステム」を起動させると、さらに500回転もエンジンが高回転になってパワーを絞り出してくれるのだ。説明してくれたホンダの技術者たちは、口を揃えて「3リッター並みの怒涛の加速を楽しんでください」というが、本当だろうか?

ホンダのヘンタイ技術者のみなさん

 さっそくCVTモデルから試してみた。まずは高速道路の合流車線でスイッチON! すると持てる機能をフル稼働させて一気にグワッと加速する。「3モードドライブシステム」をエコ側のECONモードにしていて、「S+」ボタンを押そうものなら、ジキルとハイド並みに豹変してくれるのでその差は明快。イメージ通りの加速感が得られるから、流れの速い本線への合流でも怖くない。間違いなく、これは3リッター並みの加速だ。続けて乗った6速MTは山坂道でテイスティング。ズボラの極みでシフトダウンせずに「S+」をポチ。確かにエンジンとモーターはフル稼働するが、こちらは加速力を決めるギヤを落とさないとダメみたいだ。さっそくシフトダウンしてから「ポチ」っと押してみると、まるでクルマとアクセルを踏む右足が直結状態になったようで痛快至極。右手で「ポチ」とステアリング操作、左手でシフトダウンを駆使しながら両足でアクセルとクラッチを操作していると、なんだかバイクみたいに身体全体で運転しているようで、たとえ低速域でも、安全にしっかりスポーツしてる実感があっていい感じだった。

 コーナリング性能も絶品。新たに設定された17インチ仕様は「ミシュラン・パイロットスポーツ3」というハイグリップタイヤを装着し、それに合わせて前後の足もガチッと引き締めた。正直なところ、かなりハードな設定だと感じたが、走り好きでサーキットの走行会にも参加する人にはオススメ。個人的にはより洗練された16インチ×6速MTモデルが一押しだ。クラッチ容量がアップした6速MTは繋がり・キレともにフィーリングが向上している。さらに上級グレードの「α」に装備される本革巻きのアルミ製シフトノブは、掌に馴染む形状だからMTフェチにはたまらないかも。このシフトノブは86/BRZの2倍はいい。ディーラーで試乗する機会があるなら、ぜひ6速MTを試乗してほしい。 <取材・文・写真/西村直人>




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