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「12人目の選手」元ボールボーイが語る恐怖の体験

サッカー,イングランド「何やってんだ!」

 ゴール裏のサポーターたちが、一斉に罵声を浴びせた。傍らにはうずくまる少年。怒気を孕んだスタジアムは、この日事件を目撃した。

 サッカーの母国、イングランドで今年1月に行われたリーグ・カップ準決勝、スウォンジーがホームで迎えたチェルシー戦。スコアレスで迎えた終盤、格上のチェルシーは必死の攻勢に出る。1stレグを勝利し、引き分けで十分なスウォンジーは水際でことごとくシャットアウト。

 78分、焦るチェルシーは攻め手なく、スウォンジーがゴールキックを得る。しかしここで、試合の進行を補助するボールボーイの少年がそのボールを放さない。露骨な「時間稼ぎ」に業を煮やしたチェルシーのアザールは、あろうことか少年を蹴飛ばしてしまった。ブーイングと歓声で騒然とするスタジアム。審判はアザールに対して、一発退場を命じた。結局、この試合を引き分けたチェルシーは、カップ戦から敗退した。

 ボールボーイを蹴飛ばすという暴挙に出たアザールへの批判も当然あったが、ボールボーイがスウォンジー幹部の息子であること、また彼が試合前日にツイッターで「時間稼ぎが必要だ」と呟いていたことが判明すると、事件は拡大の一途へ。労働者階級を中心とするイギリス中のサポーターから「金持ちなんてクソ食らえだ!」と批判の声が上がった。少年の「チーム愛」が、思わぬ騒動へと発展してしまったのだ。

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 ボールボーイの仕事は、試合のスムーズな進行を補助すること。ピッチの周りで待機し、ラインから出たボールを選手へと返す。立場的には当然中立であるべきだが、そうもいかないようだ。

◆鬼の形相で迫ってきた闘莉王に「チビりそう」

 学生時代に登録制の派遣スタッフとして、某チームのJリーグの試合でボールボーイを務めていたというS君はこう話す。「そりゃあ、ホームゲームを何試合も担当するとチーム愛も芽生えてきますよ」。

 S君は’06年のシーズン中、浦和レッズをホームに迎えての一戦でボールボーイを担当したという。レッズ相手にホームチームがリードする展開で、試合終盤にS君の前にボールがこぼれてきた。ホームチームの勝利を願う彼はここで、自主的にボールを渡すのを遅らせたという。

 するとそこへ走ってきたのは、鬼のような形相の田中マルクス闘莉王(当時浦和)。強面で知られる184cmの大男は「早くしろ!」と彼に怒号を浴びせ、ボールを催促した。あまりの迫力に「チビリそうになった」という彼は、すぐさまボールを闘莉王へ。S君は幸い蹴飛ばされることなかったが、試合終了後は急いでピッチを後にしたとのことだ。

 ときに「12人目の選手」になりえるボールボーイ。今度スタジアムを訪れた際には、彼等の動きにもぜひ注目してみてほしい。

<取材・文/スポーツカルチャー研究所>
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海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当




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