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味はジビエ料理に似ている!?広東省「ネズミ食」事情

FOOD, アングラ, 中国, 違法, 食品 ネズミの肉にゼラチンや着色料を加えたニセ羊肉が、江蘇省や上海で流通していた問題で、公安当局は、偽装に関わった数百人を逮捕したことを明らかにした。  ところが、ニセ羊肉はアメリカの火鍋チェーン「リトル・シープ」など、海外の複数の企業に輸出された可能性が浮上。中国発の“羊頭鼠肉”事件の波紋は、世界へと広がりを見せている(『南方都市報』5月9日付)。ちなみにこのリトル・シープ、日本国内で9店舗を展開する「小肥羊」と同一のブランドである。  知らないうちにネズミの肉を口にしていたとしたら――想像しただけで吐き気がするが、さらに浙江省温州市でも、高校の学食で出されたおこわから、ネズミの頭部が発見されている(『京華時報』)。  そんななか、意外にあっけらかんとしているのが広東人だ。同省仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・49歳)は話す。 「事件を受け、他の地域では本家『小肥羊』などの火鍋料理店からは客足が遠のいているそうですが、広東省だけは変わらぬ人気ぶりだそう。そもそもここでは、ネズミを食用にしていたので、ニュースを聞いても比較的ショックが小さかったのかも。田舎に行くと、猫くらいの大きさの食用ネズミが一匹400円くらいで売っているのを見かけることがある。炒め物や唐揚げにして食べるらしいですよ」  広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・45歳)も広東人のネズミ食文化を目撃した。 「広東省で今も密かに食べ続けられている料理に、『三聴』という料理がある。これはいわば、生きたネズミの赤ちゃんのしゃぶしゃぶなんです。箸で掴んだとき、湯に潜らせたとき、歯で噛んだときの合計3回の鳴き声を聞くことからこう名付けられたんだそう。もともと子孫繁栄の縁起ものらしく、ある会社の社長の還暦祝いで出てきた。私は手をつけませんでしたがみんなありがたそうに食べていましたよ」  ところで、一部の広東人が愛してやまないネズミ肉だが、気になるお味のほうはどうだろう。トラブル孫悟空の愛称でもおなじみ、中国人ジャーナリストの周来友氏(浙江省出身)に聞いた。 「想像すると気持ち悪いかもしれないけど、食べるとフランスのジビエ料理のウサギ肉みたいで結構おいしいらしいよ。鶏肉みたいな感じかな。聞いた話だけどね。僕は食べたことないからね!」  一部では野蛮ともいわれる広東人のネズミ食いの風習だが、重宝されている側面もあるという。中国在住のフリーライター・吉井透氏は話す。 「中国も今や飽食の時代で、都市部では大量の残飯を食べて肥大化したネズミが大発生している。当局は大規模なネズミ駆除をたびたび行っていますが、生け捕りにされたネズミは広東省に運ばれて消費されているという噂です。中国ではネズミよけは猫ではなく、広東人なわけです(笑)。今回の事件でも、『広東省にはネズミを使った偽装肉はない。偽装に回す前に食べられるから』という冗談も流行っています」  ネズミを使った偽装食品を根絶するため、広東人には今後もネズミ肉のさらなる消費拡大に貢献してもらいたいものだ。 <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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