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ミックスゾーンで沈黙を貫いた本田圭佑の真意とは?

サッカー日本代表 4日(火)、ブラジルW杯アジア最終予選B組、ホームでオーストラリア代表と対戦した日本は、1点を追う後半ロスタイムに本田圭佑(CSKAモスクワ)がPKを決め、1-1で引き分けた。この時点で同組2位以内が確定。5大会連続5度目のW杯出場を決めた。  5日前に行われたキリンチャレンジカップ(5/30日本0-2ブルガリア・豊田)からスタメン3人を入れ替え4-2-3-1の布陣で臨んだ日本は、MF本田圭佑とFW岡崎慎司(シュツットガルト)が復帰。左サイドバックにはブルガリア戦でスタメンを外れた長友佑都(インテル・ミラノ)が入った。  6万人を超える大観衆の後押しを受け、立ち上がりから攻勢をかける日本。その攻撃を牽引したのはエースの本田圭佑だった。開始直後から中盤でタメを作り、周囲の押し上げをサポート。GK川島が「新しいメンバーが入り、ゴールに向かっていく部分で前回よりも良い形ができていた」と語ったように、ブルガリア戦ではボールは回るもののゴールへ向かえていなかった日本に、前への推進力・力強さをもたらした。  一度マーカーの視野から消え、得意の左足でボールを受ける。フリーの味方がいればワンタッチかツータッチでシンプルにはたき、パスコースが無ければ指揮官が「日本人離れしている」と称賛したフィジカルを活かしてボールをキープ。相手DFを複数引き付け食いつかせてからパスを出すことで、受け手となる香川や長友にスペースと時間を与えた。前半16分の遠藤の左足ミドルシュート、同19分の本田→香川→本田→岡崎と繋ぎ最後は香川が決定的なシュートを放ったシーン、後半香川とのコンビで左サイドを突破した場面など、日本の攻撃は高い確率で彼の左足を経由している。  これにより、オーストラリアの中盤は徐々に中央に絞らざるを得なくなり、サイドに広いスペースが生まれた。昨夜の試合で香川真司が輝きを放った一番の要因がこれだ。オーストラリアのホルガー・オジェック監督が試合後の会見で「いるだけで違いを生む選手」と評したように、本田が入ったことで日本の攻撃は見違えるように活性化した。  後半37分、MFトミー・オアーのクロスが直接ゴールに吸い込まれるという不運な形で先制を許した日本だったが、後半ロスタイム、最後の最後で日本中に歓喜をもたらしたのもまた、エースの左足だった。自身の上げたクロスが相手のハンドを誘発し、PKを獲得。ゴールど真ん中に突き刺さる渾身の一撃で同点とし、土壇場で勝ち点1をもぎ取った。 「違いを生み出せる。予選を通じてその存在は大きかったと思う」(香川) 「ボールキープできるし、敵が来てもビビらずパスを回してくれるから攻撃も落ち着く」(内田) 「僕は圭佑なら世界トップのクラブでもやれると、本気で思ってる」(長友)  史上初めてホームでW杯出場を決めた試合後、選手たちは一様に本田を称賛した。インテルでプレーする長友のコメントも、決してリップサービスではないだろう。  中盤にまさしく“君臨”した日本のエースは、待ち受けた報道陣の問いかけに一切反応することなく、ぶ然とした表情でミックスゾーンを通過した。W杯出場を懸けた重要な一戦で改めて絶対的な存在であることを示したが、タッチミスや流れの中でのシュートミスがあったのも事実。そして何より「試合に勝ってはいない」ということが、彼にとっては不満だったのだろうか。 “本気でW杯優勝を狙うにはこんなものではまだまだ足りない”  チームメイトにそう訴えかけるような表情で、1人無言のままバスに乗り込んでいった。 <取材・文/福田悠>
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、今季は神奈川県フットサルリーグ1部HONU(ホヌ)でゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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