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「中国の仕掛けに屈するな」憲政史研究者・倉山満

 6月4日、八重洲ブックセンターにて『嘘だらけの日中近現代史』を上梓した倉山満氏の新刊発売記念講演が行われた。その模様をダイジェストでお伝えする。 ⇒【前回の記事】はこちら『中国の手先だった日銀は討った』
https://nikkan-spa.jp/461503
倉山満

「中国のプロパガンダは見え透いているので打つ手はいくらでもあります」

「前回、日銀を手中にしたのは核武装と同じ効果がある、という話をしました。これには先例があります。1985年に『プラザ合意』があり、米ソ冷戦最末期に、レーガン大統領がイギリスとフランスを誘って、西ドイツと日本からカネを引き出そうとしました。その言い分は『我々が必死になってソ連と命がけで戦っているときに、お前らだけがいい思いをしているのは何事だ。カネを出せ』というものです。そんな言いがかりをつけて西ドイツと日本に強制的に通貨高の圧力をかけてきました。日本は何をやったかというと、1年間ほったらかしました。1ドル=235円が150円台まで円高になりました。日本銀行というところには、それくらい根深い問題があるんです」 ――しかし、そのとき大蔵省には大場智満財務官がいた。 「大場智満財務官が『日銀なんとかしろ』と、大蔵省全体を通じて圧力をかけ、金融緩和をやった。当時の公定歩合5%から2.5%も下げるという、要するに2倍の金融緩和です。そしたらあっという間に1年経たずに景気が回復して、そのままバブルになっちゃった(笑)。アメリカとしては、一体何をやってるんだという話で、FRB議長ポール・ボルガーは敗戦責任を問われてクーデターで放逐されています。その後の日本はバブルになって調子に乗りすぎるのですが、アメリカはほぼ降伏に近い状態になった。日銀を正しく使いこなせるというのは、核武装しているようなものだということがおわかりになったかと思います」 ――前回、今後の中国の仕掛けとして、チャイナ系ヘッジファンドが株価操作することについても危惧されています。 「小泉内閣時代にも大胆な為替の市場介入をやっていますが、日銀が本気を出せばヘッジファンドなんかに負けません。当時は、伝説のヘッジファンド撃墜『日銀バズーカ・日銀砲』と言われていますが、一日でヘッジファンド100社が倒産したとも言われています。それくらい強い。金融というのはほぼ国をつぶせるぐらい強い武器です。だから、黒田さんが中国のスパイだったら……もうお手上げですね(笑)。でも、安倍さんはオバマさんを立ち会いにさせて黒田さんを日銀総裁にしたわけですから、ちょっと考えにくい。日銀がアベ・クロ体制であるかぎり、大丈夫です。また、岩田規久男さんという最初からリフレを唱えていたような人が副総裁にいるかぎり大丈夫だと思います。いろいろ不安定要因はあるのですが、総理大臣が死ぬ気で戦ってるときに逆らえる日銀マンなどいませんから」 ――中国の二つ目の仕掛けである『プロパガンダ』についてはいかがでしょうか? 「彼らの超絶な得意技ですが、手口は意外と簡単です。夫婦喧嘩に例えると、日本人であれば、『夫婦喧嘩は犬も食わぬ』といって家の中でやります。まともな大人だったら、『子供には見せないようにしよう』とか。しかし、中国は違う。家の外へ出ていって、第三者にどっちが正しいか聞いてもらう。しかも、旦那と裸の奥さんと間男が外へ出ていって誰が正しいかって、第三者を煽り始める。そしたら間男が『私がいちばん正しい!』みたいな。『恥の文化』ではなく、中国は『面子の文化』です。似てもいないし非なるもの。ときどき、『同じ漢字を使うから仲間だ』とか訳がわからない人がいるのですが、いま世界で漢字を使っているのは、日本と台湾だけです。台湾は繁体字(はんたいじ)といって日本と同じような漢字ですが、中国は簡体字といって別の文字です。王朝交代ごとに文字を変え、発音も変えてしまっています。台湾人は繁体字を正体字(せいたいじ)と言っているので、繁体字という言葉を撲滅して、正体字という言葉を広めればいい。中国は嫌がるでしょう。話がそれましたが、中国のプロパガンダの手口は三つあって、簡単にいうと、『1、第三者に訴える』『2、事実はどうでもいい』『3、ひたすら力のかぎり叫ぶ』。こんなアホなものに騙される人がいるのかと思うのですが、いるんです。それが日本人です」 ――満洲事変以降、日本が負け続けている理由がわかったような気がします。 「中国が勝っているんじゃなくて、日本人が勝手に負けている。いっそのことキャッチコピーを優秀なアメリカの広告会社に発注すればいい。例えば、バルカン紛争のときの『エスニック・クレンジング』というコピーをクロアチアは使いました。これは『セルビア人は民族浄化をやっている』と言って、セルビア人政治家のミロシェヴィッチをヒトラーに例えたわけです。アメリカのPR会社を使ったボスニアとクロアチアはすごい。クロアチア人は自分たちがヒトラーの肖像画を飾ってるような国なのに、『あいつらこそヒトラーだ』だと宣伝しまくったわけです。それがプロパガンダの世界です。しかし、ボスニア人もクロアチア人も、そのPR会社の代金を踏み倒したので、暴露本が出てバレちゃった(笑)。国際政治って、そういうものです」 ――日本人である以上、代金は払わなければならない、と思いたいです(笑)。 「それが普通の資本主義なんですけどね。『中国に10億の市場がある』と言います。本当にマーケットなの? バザールじゃないの? と。資本主義の大前提が何かと言えば、『1、約束を守る』『2、約束を破ったやつをちゃんと制裁する裁判所がある』ということです。その前提がありますか、中国に。中国のエリートってジョン・スチュワート・ミルとかを一生懸命読んで、『約束を守る』ってどういうこと? 『法の精神』って? 『リーガル・マインド』って?? ということを必死になって考えて悩んで、ついぞわからなかった人たちです(笑)。日本人であれば、人治主義と法治主義は別の定義です。法治主義であれば、どんな偉い人も法には従わなければならない。偉い人は法に従わなくていい、といった北朝鮮とは違うという意識がある。しかし、中国の漢人の法治主義と人治主義は一緒。漢人の法治主義の『法』というのは、君主の命令です。いかに君主が威力のある命令――威令を出せるかということに腐心しているのが中国の法治主義です」 ――やはり中国にかかわってはいけない、ということがよくわかりました。今後も尖閣の挑発に決して乗らず、プロパガンダを見抜くために目を養っていきたいです。 「中国のプロパガンダなんて、見え透いているので打つ手はいくらでもあります。こっちがちゃんとして相手にしなければ、勝手に滅びていきます。我々は一度大日本帝国を滅ぼされるというひどい目に遭ったわけです。だからこそ、ちゃんと歴史に学びましょう。まったく同じ手口でもう一回滅ぼされそうになったことを忘れてはいけません(笑)。この絶好の機会を生かすために、『嘘だらけの日中近現代史』を読んで学んで、これを人に広めて、7月に中国をどうやって滅ぼせるかなということを考えていただければなと思います。だから真実は探るものではなく、起こすものです。ちなみに、私の言う真実は『いんぼう』と読みます、と最後に付け加えておきます」  倉山満氏の舌鋒は鋭さを増すばかり……。次回「質疑応答編」もご期待ください。<取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/石川徹> 【倉山満氏】 1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。中央大学大学院博士前期課程を修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員を務め、同大学で日本国憲法を教え現在に至る。2012年、希望日本研究所所長を務める。著書に『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)、『検証 財務省の近現代史』(光文社)、『嘘だらけの日米近現代史』(扶桑社)など。HP「倉山満の砦(http://www.kurayama.jp/)」「倉山塾(https://kurayama.cd-pf.net/)」を主宰
嘘だらけの日中近現代史

嘘にまみれた中国の正体

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