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第3回電王戦開催へ トップ棋士・屋敷九段が出場決定

第3回将棋電王戦の開催が発表された

第3回将棋電王戦の開催が発表された

 8月21日、東京・六本木のニコファーレにて「電王戦に関する記者発表会」が行われた。記者発表会では、日本将棋連盟会長の谷川浩司九段、同じく理事の片上大輔六段、株式会社ドワンゴ会長の川上量生氏が登壇。元NHKアナウンサーの吉川精一氏が司会で、『第3回 将棋電王戦』についての詳細が発表された。 ⇒【写真】はコチラ
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=496106
 まず『第3回 将棋電王戦』は、本サイトでも詳細にレポートした『第2回 将棋電王戦』(https://nikkan-spa.jp/409911)と同様にプロ棋士5人と5つのコンピュータ将棋ソフトの団体戦で、開催時期は2014年の3~4月となる。出場する5人のプロ棋士は、現時点でほぼ内定しており、この日は屋敷伸之九段が大将格として紹介された。  屋敷九段は、前回の『第2回 将棋電王戦』でプロ棋士側の大将を努めた三浦弘行九段(2013年8月16日付けで八段から九段に昇段)と同じ、将棋界トップ10である「A級」に所属する。史上最年少のタイトル獲得記録(『第56期 棋聖戦』)を持ち、ほぼ同年代の羽生善治三冠とともに天才棋士として鳴らした、正真正銘のトッププロである。  谷川会長によれば、「(プロ棋士の本分である対人間の)タイトル戦に集中させたい」という配慮から、『第3回 将棋電王戦』では、基本的にタイトルホルダーの出場はないという。また出場内定者がこれからタイトル挑戦者になった場合は、その都度考慮するとのこと。  渡辺明竜王、森内俊之名人、羽生善治三冠などタイトルホルダーの出場を期待する声も大きかったため、この点は少々肩透かしな印象がある。ただし、谷川会長からは、団体戦で敗れてしまった前回の結果を受け、失礼に当たるかもしれないがと前置きしながら、「前回よりもより段位の高い布陣で臨む」という発言もあった。実際の将棋の内容や面白さという側面では、タイトルホルダーが出場した場合と遜色ないものを期待できるはずだ。  一方のコンピュータ側には、前回とは異なる新たなルールがいくつか設けられることになった。特に大きな違いは、出場ソフトは主催者が用意する統一のハードウェアを使用すること(パソコン販売で知られる「ドスパラ」を運営する株式会社サードウェーブが提供する「最強スペックのもの」)。そして、主催者側からプロ棋士側に本番と同じソフトとハードで事前に練習対局できる環境が用意されるという2点だ。  川上会長からは「(プロ棋士と開発者の)人間同士の戦い」をより明確にしたいという話があり、ハードの優劣ではなく、純粋なソフトの優劣を測る基準を設ける意味もあるとの説明があった。また「公式戦もあるなかで十分な準備ができなかったプロ棋士の方もいらっしゃった」とのことで、このルール変更は「お互いに本気を出せる環境を用意したい」という意向を反映したものだ。  前回は、ハード的に本番と同じ練習対局環境を用意することが不可能な対局もあった。したがって、ハードウェアの制限と練習対局環境の用意は、2つともそろわないと意味を成さない。単純な計算力という側面では、どうしてもコンピュータ側は前回より劣ってしまうのではないかという懸念もあるが、興行的な意味でも、このあたりは現状も踏まえた妥当な落としどころという印象だ。  ちなみに先日行われた『第23回 世界コンピュータ将棋選手権』(https://nikkan-spa.jp/438662)では、上位3チームが「クラスタ化」を行なっていた。この結果だけを見れば、コンピュータ側は台数が多いほうが有利ではあるだろう。しかし、リンク先の記事をお読みいただければ、ハードの台数が多いほど将棋が強くなる、というほど単純な話ではないことがわかるだろう。  統一的なルールが示されたこと自体は、開発者にとって不利なことばかりではない。開発にかかる経費を考えれば、1台のみというルールがメリットになる開発者も多いはず。最終的には、開発者の努力や技術がモノを言うというわけだ。  さらに『第3回 将棋電王戦』に出場するコンピュータ将棋ソフトは、2013年11月2~4日の日程で行われる『将棋電王トーナメント』の上位5チームから選出されることも新たに発表された。トーナメントの優勝ソフトには「電王」の称号が与えられ、総額500万円の賞金も用意される。賞金が高額ということもあり、これまでにない新たなコンピュータ将棋ソフトが登場するのではないかという期待もふくらむところだ。  なお記者発表会では、2013年8月31日に『電王戦タッグマッチ』が開催されることもあわせて発表された。『第2回 将棋電王戦』に出場したプロ棋士とコンピュータ将棋ソフトがタッグを組み、5チームがトーナメント形式で対局する。  こちらは持ち時間が短い早指しで、コンピュータが示す候補手や読み筋のログを参考にしながら、プロ棋士が対局するとのこと。敵同士だった人間とコンピュータが、息があったチームプレーを発揮するのか、それとも意見が割れてチグハグな指し手になってしまうのか。こちらも将棋と人間とコンピュータが示す新しい可能性の一端として楽しみなところだ。  今回発表された『電王戦タッグマッチ』『将棋電王トーナメント』『第3回 将棋電王戦』の対局の模様は、ニコニコ生放送にて完全生中継される。ニコニコ動画に公開されている公式PVも、これまで以上にハイクオリティだ。特に『電王戦タッグマッチ』の公式PVで、群馬のロボットを駆る塚田泰明九段のニュータイプぶりは是非ご覧いただきたい。 <取材・文/坂本寛 撮影/林健太> ◆第3回将棋電王戦 http://ex.nicovideo.jp/denou/ ◆第3回将棋電王戦 開催発表PV – ニコニコ動画:Q http://www.nicovideo.jp/watch/1377051778
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