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「第23回 世界コンピュータ将棋選手権」観戦記 真の最強は?

早稲田大学,国際会議場

選手権は早稲田大学の国際会議場で行われた

 ゴールデンウイーク真っ盛りの5月3日、東京・早稲田大学の国際会議場にて『第23回 世界コンピュータ将棋選手権』が開催された。文字通り、プログラマーたちが手塩にかけて作り上げた将棋ソフトを持ち寄り、その年の世界一を決定する大会だ。

 ちょうど『第2回 将棋電王戦』では、昨年の選手権で優勝した「GPS将棋」が三浦弘行八段を破り、選手権で1位から5位までのソフトが登場した団体戦でも、プロ棋士に対して3勝1敗1引き分けと勝ち越したばかり(http://nikkan-spa.jp/429665)。例年にも増して大きな注目を集めた大会の、一部始終をお届けする。

◆5月3日/一次予選

 選手権は5月3日から5月5日までの計3日間で行われた。電王戦に出場したような強豪はシードになっており、初日の一次予選は主に初出場組が中心。参加チーム数が24組と多いため、変形スイス式トーナメントで二次予選に進む8チームが決定された。ここでは特に参加者たちの注目を集めた4ソフトを紹介しておこう。

【ソフト名】大合神クジラちゃん
 ニコニコ生放送のリスナーのパソコンを専用ソフトで接続し、すべてのパソコンを指し手の計算に利用するという斬新な機能を実現。マンガ『ドラゴンボール』の「元気玉」のようなものだと言えばわかりやすいだろうか。思考過程によって表情が変化するキャラクターを使ったインターフェイスもユニークだ。

 もちろん開発者・えびふらい氏は、大会中もニコニコ生放送で指し手やソフトの思考過程をリアルタイム配信。二次予選の準備のために来場していた「ponanza」開発者・山本一成氏も、そのシステムの斬新さに舌を巻いていた。

「これって電王戦とかで動かしたら『GPS将棋』以上のマシン台数になったりするかもしれないですよね。すごいなあ。『ponanza』でも同じようなことやってみたいなあ」(「ponanza」開発者・山本一成氏)

【ソフト名】NineDayFever
 コンピュータ将棋ソフトがしのぎを削るネット対局場「floodgate」に登場し、いきなり好成績をおさめたことで話題となっていた「PuppetMaster」を改称したもの。名前はともにロバート・A・ハインラインのSF小説「人形つかい」に由来する。「Bonanza 6.0」の機械学習機能の改良を目指して開発。あえて短時間で対局した棋譜を学習に用い、局面の評価値の誤りを解析することで棋力を向上させるという新手法が導入されていた。

世界コンピュータ将棋選手権

初出場らしからぬ風格が漂う「NineDayFever」。開発者の金澤裕治氏は、富士通のCPU設計技術者で機械学習に詳しいとのこと。

【ソフト名】N4
 現在のコンピュータ将棋ソフトは、通常3つの駒の位置関係から評価値を計算する方式だが、本ソフトでは、それを4駒間で実現。1局面あたりの計算量が激増するため、単純に読める手の数は減るが、引き換えに評価値の正確さはアップするとのこと。また莫大なメモリ容量が必要で、参加ソフト最大の256GBものメモリを1台のマシンに搭載していた。

世界コンピュータ将棋選手権

野心的なシステムを導入した「N4」は、その指し手が人間的に自然なものに映ると評判だった。

【ソフト名】メカ女子将棋
 メカさゆりん(竹部さゆり女流三段)、メカみおたん(渡辺やよい女流1級)、メカりえぽん、メカきむりん(自称・小5女子)の4人で開発されたソフト。「おっさんの祭典」である選手権の女子率アップという目的は十二分に達成されていた。

世界コンピュータ将棋選手権

メカ女子将棋チーム。右からメカみおたん、メカさゆりん、メカりえぽん、メカきむりん(自称・小5女子)。参加チームで女子がいるのはここだけだった。

 初日は初参加組が多いということもあり、時間切れ負け、通信トラブル、謎の悪手連発など、ソフトのかわいらしい側面も見られたが、それもまた選手権の華。和気あいあいとした雰囲気で全対局が終了した。初参加で一次予選を突破した「NineDayFever」と「N4」は、はたしてどこまで通用するのか。

⇒二次予選観戦記へ続く http://nikkan-spa.jp/438663

◆第23回 世界コンピュータ将棋選手権
http://www.computer-shogi.org/wcsc23/

※ 5/14発売『週刊SPA!』「エッジな人々」では、渡辺明竜王のインタビューを掲載「電王戦には出たくない」。
詳細⇒ http://nikkan-spa.jp/438491
<取材・文・撮影/坂本寛>




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