お盆渋滞の基礎知識&お盆渋滞緩和の理由
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
今年のお盆、高速道路の渋滞が少なかったのは、我々ユーザーにはうれしい限りだったのだが、お盆に高速道路が渋滞してくれないと困る人たちも……。高速道路が大渋滞して大変だというニュースをやりたくて、現実をまるで直視しようとしない大マスコミのみなさまに、渋滞研究家のはしくれとして、苦言申し上げます
MJブロンディ=文&写真
Text&Photographs by Shimizu Souichi
⇒【前編】はコチラ
◆TV局の“おバカスタッフ”に教えるお盆渋滞の基礎知識&お盆渋滞緩和の理由
【お盆渋滞の基礎知識】
・サグ渋滞とは?
サグとは、下り坂から上り坂に切り替わるポイントのこと。勾配の変化に気づかず速度を落とすドライバーをきっかけに、渋滞が始まる。自然渋滞の大部分がコレ
・渋滞は必ず追越車線から始まる
それは流れの速度が落ちてくると、少しでも速く走ろうと、クルマが追越車線に集中するから。が、渋滞開始と同時に多くのクルマが追越車線から逃げ出し、すぐ全車線に伝染する
・どの車線が速いのか?
路線や時間帯によって異なるが、左車線が若干速いことが多い。ただしその差は、私の調査によると、渋滞20kmあたり1分程度と軽微。大差ないので車線変更はムダ!
・高速か一般道か?
渋滞しているからと言って、高速道路から一般道に降りて高速道路に勝てる確率はせいぜい1割。かえって大幅に遅れる可能性も高く、ハイリスク・ローリターンだ
・一番怖いのは女子トイレ渋滞!
近年の渋滞は、平均時速25kmくらいで流れるので、大してつらくない。が、渋滞途中のSAでは、女子トイレが大渋滞することがある。トイレ休憩は渋滞の前に済まそう
【お盆渋滞緩和の理由】
・1000円高速の終了と帰省時期の分散化
2009年に始まった「高速1000円上限制」は、渋滞を約2倍も悪化させたが、それも2011年で終了。帰省時期など休みの分散化も、高速道路の渋滞を減少傾向にしている
・新東名・新名神・第2京阪の開通
もっとも交通量が多く、渋滞が激しかったのは東名・名神。そこが新東名や新名神、第2京阪などで複線化されつつあるため、最大の渋滞路線が消滅した。複線化は現在も進行中
・渋滞ポイントの拡幅
かつて渋滞の名所だった「大谷PA」、「都夫良野トンネル」、「綾瀬バス亭」などの渋滞が消滅したのは、その付近の道路が拡幅されたから。道路の渋滞対策は、牛歩で進んでいる
・ガソリン高
言うまでもなく、クルマの燃料であるガソリン価格が高くなれば、クルマに乗るのを控えるというのは、誰でもわかるっしょ
・極端な猛暑
あまりにも暑すぎて、エアコンが効いた涼しい家から出かけたくなくなりゃ、渋滞は減る。当たり前だ
【結論】
これを読んでもまだわからない場合は、まず私の著書『高速道路の謎』、『首都高速の謎』(ともに扶桑社新書)を読みなさい。電話をかけてくるならそれからにしなさい。
― 高速道路渋滞の謎 早わかり【2】 ―1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
『高速道路の謎』 事故渋滞の高速と下道速いのはどっち? さまざまな事象を多彩なデータと現地取材から解き明かす |
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