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ロンドンのギャングがカネに困って暴動!?

ロンドン暴動が政治的な目的ではなく、偶発的な事件を発端とし、それを犯罪行為に仕立て上げたギャングによる「組織的な略奪」であることは前回述べた。(※)。では、なぜギャングがこのような大胆な行動に走ったのだろうか? アナリストの青木文鷹氏に聞いた。
(※「ロンドン暴動の裏にギャングの暗躍!?」 http://nikkan-spa.jp/50043

london riots2青木 ギャングの収入源は主にドラッグや盗品の横流しですが、中心となるドラッグの流通が困難になってきているのです。これまでドラッグは欧州の地中海側諸国を経由して英国に入るルートが中心で、その仕切りは伝統的英国地下社会でしたが、近年この流れが変わってきています。これは麻薬類の取り締まりによる部分と、米国の麻薬取り締まりによって市場を失った生産側の市場開拓によるものです。

米国でのコカイン、ヘロインの消費量が急減する一方、欧州市場は拡大しているのです。欧州は比較的大麻などに寛容な風土もあり、またMDMAを始めとするデザイナーズドラッグ(脱法ドラッグ)の消費が急増し、新ドラッグも大量に開発されています。これらの状況はドラッグの流通ルートにも変化を及ぼし、英国への流入経路でアフリカ経由及びメキシコなど南米→カリブ経由の流通ルートが急速に台頭してきているのです。このようなルートは移民などの人的コネクションによって構成されています。特に新ルートにおいては「現地に溶け込めない移民」のコネクションが中心になり、これら移民系ギャングは伝統的英国地下社会とは別の特性を持っていると考えていいでしょう。

――既存ギャングが移民ギャングに脅かされている、と?。

青木 加えて、「規制強化や単価下落」「貧富の差の拡大」などが複合し、「金銭的に厳しい環境になった」と考えられます。身も蓋もない言い方をすれば「金回りが悪くなった」のです。サッチャー政権以降、英国の貧富の差は拡大の一途をたどっていて、貧富の差を示すと言われているジニ係数は右肩上がりです。これは金持ちと超貧乏人が増えているというわけではなく、実際に起こっているのは「資産家の一人勝ち」と「中産階級の減少」と「貧困層の増加」です。欧州経済は極めて厳しい状況にあり、数字以上に実体経済は脆弱になっています。

特にここへ来て国際商品相場の急騰で庶民の生活は厳しくなっている半面、英国の場合、移民層などに対する生活保護は手厚く行われているので、このような状況に中産階級以下つまり国民の多くが不満を持っているのです。失業率も高く、生活保護受給者の中には貰ったカネでドラッグを買う人も多くいる。しかし、ドラッグはある程度以上の収入が無ければ買えないし、買える人が減ってくればディスカウントせざるをえなくなり、売人や組織の収入は減少する。

そんな中、英国では生活保護の見直しとデザイナーズドラッグに対する「暫定規制」導入が検討されています。前者は読んで字の如く手厚すぎるという意見のある生活保護に対する見直しであり、後者は大量に発生する新ドラッグを抑え込むために、科学的検証が完了する前に危険性が予測される新型薬物に対し暫定的な規制措置をするものである。

――デザイナーズドラッグに対する「暫定規制」が導入されるとギャングの収入源はかなり細る、と?

青木 富裕層はカネをかけて充分に防犯する為、窃盗や略奪は失敗するリスクが高い。地下経済も当然、実体経済に連動しているので、景気悪化状況を考えると、彼らにとっては手詰まり感が漂う。このような状況になると、ギャングとしては新しい収入源を確保するか、新しい収益確保手法を生み出すか、それもダメなら一時的にでも手持ちの資金を増やそうとするのです。

――高い失業率、拡大する収入格差、低迷する景気……これら潜在的な不満が社会に充満している状況で今回の黒人殺害は発生しました。

青木 初期の抗議デモに対して警察の対応が穏便だったのは、英国で発生したこれまでの抗議デモや暴動が大きな略奪などにそれほど結びつかなかったからです。しかし、今回はデモを利用しようとした人間が事態の悪化を招きました。この抗議デモに対する警察の対応を見て、これを好機と判断し、大規模な略奪に走ったのだと思われます。

さらに今回の暴動はもっと深刻な問題を抱えているという。青木氏は、これは「決して欧州に留まらない」と推測する。そこで次回は、ロンドン暴動が与えるヨーロッパへの影響、そして日本にはどのような関わりがあるのかについて話を伺う。

続きはこちら⇒http://nikkan-spa.jp/50096

構成/犬飼孝司(本誌) 写真/hozinja from flickr

― ロンドン暴動の裏で何が起きていたのか?【2】 ―




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