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フタバ元社員の贈賄逮捕で日系企業が大混乱の理由

 中国の地方政府幹部への贈賄容疑で、トヨタ系の自動車マフラー大手「フタバ産業」の元専務が、愛知県警に逮捕された。

 元専務は’07年、広東省東莞市の現地法人の工場の違法操業を中国側の税関に指摘された際、地元政府幹部に数十万円の現金や女性用バッグなどを渡し、処罰の軽減を依頼していた。’98年に外国公務員への贈賄が不正競争防止法で禁止されて以降、中国人への贈賄行為では初の立件となる。

 この一件は、中国でビジネスに携わる日本人の間で大きな波紋を呼んでいる。

「あの程度の金額で立件されては、『中国では商売するな』と言われているようなもの」

広州 こう話すのは、広州市郊外で日本料理店を経営する松田尚さん(仮名・42歳)だ。

「中国では、消防法や衛生法、税務がコロコロ変わり、小規模ビジネスはとても対応しきれない。そこで、例えばレストランでは各当局の役人にタダ飯を食べさせて、大目に見てもらう。これはどこでもやっている。遠慮を知らない中国の木っ端役人は、友人連れや家族連れで足繁くやってくるので、そのコストは年間で数十万円になることもザラ。それでも営業停止や罰金よりはマシですから。大手メーカーがやっている地元政府への寄付だって、その大半は上層部のポケットに入るというのは暗黙の了解ですよ」

 中国在住のジャーナリスト・吉井透氏も、中国在住日本人の当惑ぶりについて、こう話す。

「’06年、別の収賄容疑で逮捕された中国建設銀行の幹部が、法廷で『日立からも賄賂を受け取った』と証言したんですが、日本の警察は動かなかった。なのに、フタバ産業の一件では、収賄側は取り調べすら受けておらず、収賄の事実も否定したにもかかわらず、贈賄側だけが逮捕された。極めて不可解で、背後に別の意図があるとしか思えません」

 一方、深セン市在住の牧原健二さん(仮名・39歳)が勤務する日系メーカーでは、今回の一件を受け、コンプライアンスの見直しを実施したというが……。

「9月19日は、月餅を贈る習慣で有名な中秋節でした。当社では毎年、関係当局の担当者に商品券を同封した月餅を贈っていたのですが、事件を受けて『贈賄で逮捕されるかも』との声が上がり、今年は月餅のみを贈った。その後、事情説明のため、月餅を贈った担当者に電話をしたら、ものすごく冷たい対応をされた。事業に悪影響が出なければいいのですが」

 広東省東莞市のメーカー勤務・高島功夫さん(仮名・37歳)によると、中国の公務員にも、日系企業との付き合いを警戒する動きも。

「ウチでは税務署の職員を食事に招き、個人的に税務上の“アドバイス”をもらっていたんですが、この一件が明らかになって以来、『君たちと付き合うと災難に巻き込まれるから』と、誘いを断られてしまった。外国公務員への贈賄罪はアメリカをはじめ複数の国で制定されていますが、私が知るところでは、こんな少額の贈賄で立件した例はありませんから」

 コンプライアンスも大切だが、中国ビジネスで重要とする「関係」が、日本企業だけ使えなくなったとしたら、中国市場で世界に後れを取ることになりかねない。 <取材・文/奥窪優木>

◆常態化する外資の巨額賄賂

 中国では、フタバ産業とはケタ違いの贈賄に手を染める外国企業も多く、見返りもケタ違い。一例を見てみると……

【シーメンス子会社(独)】
約14億円もの賄賂を高官に贈り、見返りとして国有病院に医療設備を販売。約300兆円もの売り上げを得ていた

【グラクソ・スミスクライン(英)】
公務員や医師に約5億円を贈り、医薬品の価格つり上げを依頼。これにより中国市場20%以上の成長率をキープ

【IBM(米)】
中韓の政府関係者にあわせて約50億円を贈賄。政府系プロジェクトに絡む巨額契約を不正に結んでいた

【アルカルテル・ルーセント(米)】
大規模電信事業に絡む建設工事を、複数の地方公務員に合わせて約10億円を贈賄することで受注していた

【ウォルマート(米)】
複数の地方自治体の高官に計5億円以上にのぼる贈賄を行い、進出時の便宜供与を受けていた疑いがある

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