防衛大の保険金詐欺事件は「伝統」だった!?
陸・海・空の幹部自衛官を養成する防衛大学校(以下、防大)で発覚した同校学生による保険金詐欺事件は、9月27日、5人の学生を懲戒退学処分とし一応の幕引きを見せた。
だが関係者によると、「5人はトカゲの尻尾きり。現役防大生100名余りが関与しているし、現在、幹部自衛官として勤務するOBを含めると、その数はさらに上回る可能性も出てきている」というから穏やかではない。
そもそも、この事件は、けがをしていないにもかかわらず、けがをしたとして診断書や保険金申請書類などを偽造、保険金を詐取したというもの。現在、防大では58期生から61期生が在校しているが、同様の手口で過去に保険金詐欺事件で47期生も処分されており、この手の事案は常態化していた疑いが持たれている。
こうした事態を受けてか、現在、防大では、この保険金詐取に手を染めたと思われるOBのうち、詐欺罪の公訴時効7年に及ばない、部隊勤務の2尉、3尉クラスの若手幹部らが、かつて所属していた部活動や大隊の後輩に、この件の防大での対応や拡がり具合を“探る”電話が引きも切らないという。
また週刊SPA!の取材により、こうした手口での保険金詐取は、一部の防大生の間では「副業化」していたとの複数の防大OBの証言も入手した。
「防大では全学生が体育会系部活への参加を義務付けられているが、とりわけ、アメリカンフットボール部、ラグビー部は、その活動柄外傷も多く、これを理由に医務室で受診するんです。で、これをもとに保険会社に治療費が必要として、保険金を請求するという流れ」(OB)
ただし、「アメラグ」部と呼ばれる部活以外の学生であっても、この保険金を手にする手順を目の当たりにし、医務室の受診表を偽造、保険会社に保険金請求しているというから、問題は根深い。
「防大生は部活以外でも、清掃や日々の訓練などで、けがをすることが多い。だから、頻繁に受診し、保険金請求しても、それがおかしいと思う意識はあまりない」(防大生)
今回、懲戒退校処分となった5学生は、全員、第3大隊の所属だが、前出の防大生によると「確かに第3大隊の所属ですが、もともと第2大隊所属の学生もいました。なので、まずは第2大隊も徹底的に調べるべき。第1、第4大隊でも、同事案に関与している学生は必ずいる筈。OBにも聞いてもらえればわかりますが、全校で、これは“副業”として認識されていたことですから」と話す。
5人の学生が懲戒退校処分となった27日、訓練課長・1佐は「責任は学生、そしてこれを指導している指導官にある」との発言を繰り返したという。
「懲戒退校処分となった5人の学生を出した第3大隊の首席指導教官(2佐)に、その責任のすべてをなすりつけようという意図からでしょう。問題が発覚した当初、長年続く、全校的な問題と捉える向きが多かった。しかし、最初に発覚した学生が第3大隊所属で、警務隊の調査により他の学生も浮かび上がったことから、追加で他の4学生の処分が決まったのですが、内部では、どうも、この時点で第3大隊だけの問題として、処理しようという動きが上層部であったのではとの声もあります」(防衛大勤務・事務官)
なお、防大では9月30日、本件に関する調査委員会を立ち上げ真相究明に乗り出すことになった。前出の防衛大勤務の事務官は続けて言う。
「防大に限らず、自衛隊全体でも、この手の事案はよく見聞きする。まずは防大で徹底的に膿を出し切り、防衛省・自衛隊全体の、この悪弊を断ち切って欲しい」 <取材・文/秋山謙一郎>
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