植草一秀氏が警告「消費増税は日本経済を破壊する」
東京オリンピック招致を手中に収め、勢いを増す安倍政権。それに続いて第5の矢=消費税大増税を放つ。過去には竹下登氏、橋本龍太郎氏が同じ矢を放ち、あえなく討ち死にしたわけだが、’14年度に放たれる渾身の矢は一体何をもたらすのか。
◆絶好調安倍政権が放つ渾身の矢 消費税増税の吹き矢で日本経済は浮上か墜落か?【後編】(政治経済学者 植草一秀氏)
⇒【前編】「竹下、橋龍が討ち死にした消費増税に正義はあるか?」はこちら
安倍政権は’12年度末に13兆円の補正予算を編成し、この財政出動が’13年前半の株価上昇の一因になった。補正予算効果は’13年度の経済に流れ込んだわけだ。問題は、’14年度にかけて補正予算分の財政支出が減少するため、それがそのまま’14年度の経済抑圧効果を生むことだ。
国民負担増の9兆円と合わせると、’14年度の財政デフレの規模は22兆円に達する。これはGDP比4%を超える。’13年に「財政の崖」と呼ばれて大騒ぎになった米国の財政赤字削減規模がGDP比3%だったことを考えると、まさに「財政の絶壁」と言える。
米国は緊縮財政の規模をGDP比1%強に圧縮して、経済撃墜を回避した。安倍政権は経済の落ち込みを回避するために6兆円の経済対策を策定しているが、この規模の対策ではどうにもならない。’96年度に橋本政権が踏み込んだ緊縮財政のブレーキの規模がGDP比で約3%だった。私は“政策逆噴射”と呼んでいるが、これで見事に日本経済は撃墜された。
オリンピックの東京招致が決まり、安倍首相はこれを第4の矢とし、’14年度に消費税増税=史上最大の超デフレ政策という第5の矢を放つ。これで日本経済をこっぱ微塵に破壊し尽くしてしまう懸念が存在する。財務省の根回しが効きすぎて、適正な警告を発する者がほとんどいないが、安倍政権が“消費税増税とともに去りぬ”の事態に陥らないことを祈る。
【今週の数字】
’14年度の財政デフレの規模
22兆円
消費税率+3%引き上げと社会保障負担増加で、’14年度の国民負担は9兆円増。補正予算剥落効果13兆円を合わせると、デフレインパクトは22兆円に達する
【植草一秀氏】
シンクタンク主席エコノミスト、大学教授などを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログ「植草一秀の『知られざる真実』」(http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/)。近著に『アベノリスク』(講談社刊)がある
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