更新日:2017年11月27日 19:12
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「NY株価の大暴落はあるか?」植草一秀氏

7月末、米国金融政策決定会合と雇用コスト統計を受け、NY株価が急落。8月8日には米国のイラク空爆開始で日本株価も急落した。内外株式市場の波乱が警戒され始めているが、NYダウはこれ以上大暴落しない!? ◆警戒感から乱高下する株式市場!NY株価の大暴落はあるか?
(政治経済学者 植草一秀氏)
植草一秀氏

植草一秀氏

 7月末の米国金融政策決定会合=FOMCはインフレ楽観論を後退させた。4-6月期GDP成長率は1-3月期の▲2.1%から一転して+4.0%に好転。雇用コスト指数も市場予想を上回り、FRBによる早期金利引き上げ実施が予想されることになった。  米国の利上げは’15年半ば以降というのが市場予想の中心だったため、利上げ前倒しの可能性が浮上したことでNYダウは7月31日に前日比▲317ドルの急落を示したのである。  この流れのなかで、8月8日にオバマ大統領がイラク北部への空爆を決定。地政学リスクから日経平均株価は前日比▲454円の急落を示した。国内外市場で、株価急落警戒感が広がったのである。  そして、こうした株価急落の背景には、もう一つの不安心理が存在する。それは、1929年に始まる世界大恐慌時のNYダウと、リーマンショック後のNYダウの推移を比較する見方だ。  1929年に暴落したNYダウは2年後に底をつけて5年間の反発局面を経たのち、再反落して長期停滞に陥った。今回は’07年から2年間急落後、5年間反発して現局面に至っている。ここから先の推移に対する警戒感が強い。  日本でも消費税増税後の経済が急激に悪化している。日本の株価も米国市場に連動して再暴落してしまうのではないか、との不安が根強い。不安心理は不安心理を呼び起こすものだからだ。 ◆株式益利回りはNY株価の妥当性を示唆している  ’09年3月以降のNYダウ上昇率は年率21%にも達している。このペースの株価上昇が丸5年も持続した。これだけを見るとNY株価バブルとの警戒が強くなる。
NYダウ

1万ドルを突破した、1999年3月を起点にすると、年4%しか上昇していない。これを見るかぎり、NYダウが大暴落する要因は存在しないと考えられる

 しかし、NYダウが1万ドルの大台に到達したのは1999年のこと。ここを起点に計算すると、NYダウ上昇率は年率4%にしかすぎない。名目GDP成長率とほぼ同率である。 ⇒【画像】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=700872  NYダウのPERは現在約15倍。利回りに換算すると6.7%だ。10年国債利回り2.5%よりも4%以上高く、指標的には割安感さえある。  ’09年3月以降の株価上昇のスピードが速いから、株価変動のリズムからは一定の株価調整が生じてもおかしくはない状態だが、NYダウが大暴落する必然性は存在しない。 ⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/700859 【選者】植草一秀氏 シンクタンク主席エコノミストなどを経て、現在はスリーネーションズリサーチ(株)代表取締役。ブログは「植草一秀の『知られざる真実』」。近著に『日本の真実―安倍政権に危うさを感じる人のための十一章―』がある
日本の真実―安倍政権に危うさを感じる人のための十一章―

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