美味しい「害獣グルメ」は日本の里山や農業を救う
農作物や在来種に被害をもたらし、生態系を脅かす鳥獣たち。しかし、見方を変えれば高級食材でもある。工夫次第で益獣となりうるこれらを実際にいただいて調査してきた(https://nikkan-spa.jp/557125)。最後に、そもそも「害獣」とは何なのかをこれまで登場したシェフや害獣問題に強い関心を持つ「水曜日のカンパネラ」シンガー・コムアイさんらに語ってもらった
◆そもそも「害獣」とは何なのか?
自治体や行政、土地によっても害獣の基準はまちまち。
食の現場に近いシェフたちは「害獣という言葉自体が好きではありません。人間の都合ですし。私は山の恵みと捉えています」(オーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフ・藤木徳彦氏)、「フランスでは高級食材。日本にもシカやイノシシを食べる文化があった。それを取り戻したい」(エゾシカフェの店主・石崎英治氏)と言う。
里山保全を掲げるNGO、猪鹿庁の「狩猟サミット」で公式カメラマンを務める高木あつ子氏とコムアイ氏は次のように語る。
高木:いま狩猟はほとんど里山保全や農作物の保護のための個体数調整という観点で行われていますけど、要は人間の都合なんですよね。
コムアイ:結局、増えすぎると害獣なんです。増えすぎたのも人間の都合なのに。わたしは循環型社会に興味があって、農家で暮らしていた延長で鹿肉に出合いました。おいしいし、需要が増えれば問題の解決にもつながる。これは広めなきゃと。
高木:畜産は日本では少し無理があると思うんです。国土は狭いし、飼料も輸入頼り。捨てるほど野生動物が獲れるなら食べたほうがいい。
コムアイ:シカやイノシシは故意に太らせたお肉と違ってヘルシーだし、飼料や土地の問題もない。いろんなことがうまく回るんですよね。
販路と価格、ジビエのイメージ改革など課題は山積みだが、どうせならありがたくいただきたい。
取材・文/高岡洋詞 黒田知道 古澤誠一郎 鼠入昌史(オフィスチタン) 安田はつね(本誌)撮影/高木あつ子 髙仲建次 菊竹 規 山田耕司・難波雄史(本誌)
― [害獣グルメ]食ってみたら美味かった【8】 ―
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