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アジア人最強打者が電撃移籍!ダルの同僚に

秋信守

WBC韓国代表でも主軸を務めた秋信守。2009年以降の出塁率.392はメジャー全体でも5位だ

 テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有に来季、頼もしい味方が加わった。  来季でメジャー10年目を迎える韓国出身の外野手、秋信守(チュ・シンスー)。今オフにFAとなっていた秋は現地27日、アジア人選手として史上最高額となる7年総額1億3000万ドル(約136億円)の大型契約でレンジャーズ移籍が決まった。  31歳の秋はメジャー9年間で打率.288、104本塁打、105盗塁をマークしている左打者。シーズン20本塁打&20盗塁を3度記録するなどパワーとスピードを兼ね備えている上に選球眼も抜群で、シンシナティ・レッズに所属していた今季はいずれもリーグ2位の112四球、出塁率.423をマーク。メジャー屈指のリードオフマンとしての地位を確立している。 ◆韓国ドラフト1位指名を蹴り18歳でMLB入り  松井秀喜氏が引退しイチローも不振に喘いでいる近年、アメリカで「アジア人最強打者」の称号も手にしている秋は、日本人選手にはほとんどいないマイナーリーグからの叩き上げだ。  秋は韓国での高校時代、エース兼4番打者として活躍しており、韓国野球史上最高の有望株として注目されていた。投打で類希なる才能を発揮していた秋は、まさに昨年の大谷翔平(日本ハム)と同じような存在として、高校卒業後はロッテ・ジャイアンツからドラフト1位で指名された。  しかし当時18歳の秋は、入団を拒否。より大きな夢を掴むため、韓国球界を経ずMLBに飛び込んだ。昨年、日本かメジャーかで悩んだ末に日本を選んだ大谷翔平とは真逆の決断をしたのだ。  2000年にシアトル・マリナーズと契約した秋は、マイナーリーグで4年間を過ごした後、2005年にメジャーデビュー。しかしこの頃、マリナーズのライトはイチローの定位置であり、同じくライトを本職としていた秋はなかなか出番に恵まれなかった。  秋の才能が開花したのは、2006年途中にクリーブランド・インディアンスに移籍した後。しばらくは故障に泣かされたが2008年後半から頭角を現し、2009年に打率.300、 20本塁打 86打点、21盗塁の好成績をマーク。その後は毎年安定した活躍を見せ、2011年には米スポーツ専門性『スポーツ・イラストレイテッド』に「メジャーに数人しかいない5ツールプレーヤー(打率、長打率、盗塁、守備率、捕殺)の1人」と称された。 ◆今ではインタビューも全て流暢な英語で対応  見事アメリカンドリームを掴んだ秋だが、その道は平坦ではなかった。18歳で単身渡米した直後は言葉の壁、生活環境の違い、そしてマイナーリーグでの貧乏生活に苦しみ、何度も涙を流したという。日本の有望選手の多くが日本プロ野球を経ずに直接メジャー入りすることを躊躇うのは、マイナーリーグの過酷な環境に不安を覚えるからだ。  しかし、18歳でアメリカに渡っていなかったら、秋が今これほどの選手になっていたかどうかはわからない。MLBの先進的な育成プログラムによって選手として大きく成長し、またアメリカ野球を体に染み込ませることにもなっただろう。通訳を一切つけずにやってきたこともあり、今ではメディアのインタビューにも流暢な英語で答える。  韓国プロ野球は日本ほどレベルが高くなく、年俸水準も低いため、一概に比較はできない。それでも、大谷のように無限の可能性を秘めた選手がリスクを恐れ、充分なチャンスがあるにも関わらず大きなステージに飛び込まない現状は寂しい。日本からもやがて、秋のように大海原に飛び込み羽ばたく存在が現れてほしいものだ。 <取材・文/内野宗治(スポーツカルチャー研究所)> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当
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