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まるで氷上の哲学者?“ティムシェル”町田語録に注目せよ

町田樹選手

町田樹選手(日本スケート連盟公式サイトより)

 ソチ五輪の団体戦で男子フリースケーティング(日本時間10日0時~)に出場予定の町田樹(たつき)選手(23歳)。  フリーの演目は「火の鳥」だ。五輪前の壮行会ではこのような挨拶が報じられた。 「去年は“ソチ五輪第6の男”と言われ、過酷で激動でしたが、東奔西走した甲斐があり、皆様のご支援のおかげで、幸いにもソチオリンピックの出場権を得ることができました」 「ソチは未知なるフロンティア。恐怖心があるが、やるしかない。ソチのリンクは青が基調。火の鳥がきれいな青い空へ飛翔していく最高の舞を見せる」  なんとも雄弁な町田選手。これまでにも ソチ五輪での夢は「町田樹史上最高傑作を演じる」 「純粋芸術としてのフィギュアスケートを極めたい」 など、ほかのスケーターとはひと味もふた味も違う発言で話題になっている。  ネット上では「町田語録」を集めるサイトも登場し、いまや会見で彼が口を開くと、周囲の選手たちが笑いを噛みこらえつつ見守るという。  そんな町田選手のユニークな発言を紹介してみたい。 ◆愛読書はヘーゲル「美学講義」  関西大学文学部で哲学や美術を学んでいる町田樹選手。今季のショートプログラム『エデンの東』は、原作小説を読み込み、自ら構想を練ってきた作品だ。開幕前には突然、ヘブライ語を引用して作品のポイントを説明した。 「ジョン・スタインベックの小説『エデンの東』がプロットで、1年間かけてコンセプトを解釈し、構想を温めてきた。小説の隠れたテーマである“ティムシェル”を体現するつもりで演じています」 「ティムシェル。日本語だと『汝、治むることを能う(あたう)』という難しい言葉になっているんですが、“自分の運命は自分で切り開く”という意味だと解釈しました」  これだけではない。愛読書はヘーゲルの「美学講義」という町田選手独特の表現に、報道陣も「次はどんな語録が飛び出すか」興味津々だという。 「さなぎから蝶へ羽化するような進化した姿をお見せしたい。蝶の幼虫がさなぎになるとき、その中で何をしているかというと、“アポトーシス”と言って、今まで自分を形作っていた細胞を自分で殺してるんですね。一回、自分で自分の全細胞を破壊して、すべてドロドロの状態になるんですよ」 「基礎に立ち返り、自分の中の常識をどんどん壊していって、自分自身をひたすらに破壊して、もうドロドロの何にでもなるような状態。つまり自分でアポトーシスという状態を作って、“新しい町田樹”“新しい町田樹が追求する表現”を創り直した、というのが今シーズンにやって来たことですね」 ※参照元/Pigeon Post
http://pigeon-post.net/interviews/Tatsuki_2013_Nov_jp.html ◆町田用語に記者もポカーン  ときには難解すぎて、記者たちが当惑する場面も。 (不調からの脱出法を問われて)「アルゴリズムから得られた情報を元に、ヒューリスティックでいいコンディションをつくれた。スランプになるとその手法の繰り返しです」  翻訳すると、不調の原因を一つひとつ探ったうえで、しらみつぶしにあたるのでなく、効率的な方法に絞って試すことらしい。  こうした独創的な発言も、記者に対して月並みな表現をしたくないという町田選手本人のこだわりだという。  12月のグランプリファイナル。ショートプログラムで失敗し、絶体絶命だった晩には、こんな心境だったことを吐露した。 「“一歩下がれば、そこは死なんだ”という崖を見ました。ものすごい恐怖感でした。2勝して、潜在意識の中に慢心があって、あんな結果になったと思います。このままショートを引きずったら僕はソチに行く資格がないと思って、自分に挑戦状を叩きつけました」  全日本選手権の直前にはスケート靴が壊れたが、「まったく関係ない」と強気な姿勢を崩さず、「無の境地で行きたいです。エタノールを燃やしたときに透明な炎が出るんですが、そういう見えない炎を内に秘めて虎視眈々と狙う」と、分かるようで分かりにくい表現で燃える闘志を表明。見事、五輪代表をつかみ取った。  拠点をアメリカから大阪に移し、コーチも変えて、背水の陣で生まれ変わった町田選手。  彼が最高の演技を見せてくれた後の会見で、どんな発言が飛び出すか、こちらも期待して注目したい。 <取材・文/日刊SPA!ソチ五輪アイススケート取材班>
スケオタあるある

寒さに耐え、金欠に耐え、時差ボケや言葉の壁さえ乗り越えるスケート愛!

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