2月9日に開催されたワンダーフェスティバル2014[冬](以下、WF)。美少女フィギュア率の高さから、そっち系のイベントと思いがちだが、WFは基本的には造形イベントだ。フィギュア以外にもスケールモデルから、武器、装備品など多種多様な出展者(ディーラー)による作品が展示・即売されており、見て楽しむだけでも、造形とはなんたるかを垣間見ることができる。本記事では、一般出展者のブースで見つけた、こだわりが光る、男子マインド大歓喜の立体造形作品をチェックしていこう。
◆日用品がメカメカしいジオラマに
第17回メディア芸術祭エンターテインメント部門を受賞した池内啓人氏のブースでは「プラモデルによる空想具現化」をテーマにした作品が展示されていた。クリップライト、ラジオ、スマホケース、USBメモリーなどの日用品が、メカメカしいジオラマ状態になっており、実用は厳しそうだが、ほしいと思わせるものばかりだった。
池内啓人氏(第17回メディア芸術祭エンターテインメント部門受賞者)の作品
男なら説明不要で理解できるジオラマ・ガジェットの世界観はすばらしいものだ。同氏の作品は、2月16日まで国立新美術館に展示されているので、実際に見てみるのもいいだろう。メカメカしい質量感に酔ってほしい。
※USBメモリーは端子からわかるが、ラジオやクリップライトはパッと見ではそれだとわからないほどでありつつ、ストーリー性もあり、見ていて楽しい
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◆発光するボーカロイドヘッドギア
「INTENSITY」のブースで見つけたのは、LEDを内蔵し、発光するボーカロイドコスプレ用ヘッドギア。コスプレ用小道具では、発光していると思われるパーツの部分はメタリックシールや単純な着色で代用することが多かく、スタジオ撮影時には、ストロボなどの光源に敗北しがちだった。そこで、軽量ながら光量を稼げ、かつ低消費電力のLEDを搭載することで、その問題を解決したというわけだ。
※実際に発光する様子を見ると、とてもボーカロイド的だ。またコスプレイヤーによる実装着も見られた。写真のコスプレイヤーは15さん
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◆SFアニメのパイロットスーツも忠実再現
「すきもの」のブースでは、アニメ『超時空要塞マクロス』で一条輝ら可変戦闘機バルキリーのパイロットが装着していたパイロットアーマーが販売されていた。実際に装着できることを念頭においており、マクロス関連のイラストだけでなく、ガンプラのパッケージアートなどでも有名な天神英貴氏が設計を担当。設定資料でおよそのサイズは判明しているが、実際に計算してみたところ、キャノピーにぶつかってしまうなどの問題やショルダーパーツの複合的な曲面へのこだわりなどをクリアするまでかなりの時間を要したという。
※細部にわたって再現度が高いVF-1パイロットアーマー。なんというか、説明不要っぷりがスゴイ
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◆素人でも見て楽しめるマニアの世界
WFのなかでも根強いジャンルとなっているのが、SFイラストレーター横山宏による雑誌の連載企画『マシーネンクリーガー』(通称Ma.K.)の世界観から派生した造形物。いずれもレベルが高く、メカ好き本能が元気な人はまず足を止めていくといったシーンが多い。多くの出展者が扱っていたなかから、特に人気を集めていた作品を紹介する。
「ARCLESS MODELS」のブースでは、女性宇宙飛行士などのフィギュアを展開していた。いずれもサイズは小さく、かつ精巧で、見ていて楽しいものだった。女性モデラーがキットを買いに訪れるところも印象的。オーナーは「気がついたら宇宙服ばかりになっていた」と語ってくれたが、かっこいいから仕方ないような。SF映画でもそうだが、宇宙服の女性は妙にかっこいい。
※小さいキットながら、細部にまで造形されており、撮ってて楽しい人が多いハズ
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「TWELVE MODELERS」のブースでは、オリジナルの『大埼玉事変』の造形物のほか、オリジナルデカール、そしてMa.K.のキットを展開していた。Ma.K.の歴史は長く、説明すると長大になるため、まずはWikipediaを見てもらいたいのだが、バックボーンの知識がなくても、イメージしやすいため、知らないからスルーは実はもったいない。
※『大埼玉事変』のキット。地名や手に持つ武器から、埼玉が大変な状況であるのはよくわかる
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※Ma.K.キット。ガンダムのように巨大ではなく、人の延長線上のサイズであるため、なんとなくでも運用やシーンをイメージしやすい。もちろん、作り込みや塗装の上手さもあるのだが
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「rebuild+」のブースもMa.K.中心だが、ロボットアニメ『銀河漂流バイファム』に登場した宇宙強化服「ウェア・パペット オールオーバー」もあった。『月刊モデルグラフィックス』に掲載されたスケッチを立体化したものだという。
※rebuild+のもの。今回訪れたなかではもっとも塗りが好みだった。ほどよく重くていい感じだ
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◆突き抜けると独自世界観を生み出す
造形ベースにオリジナル作品を生み出す出展者もいる。「chrysolina」はそのひとつで、模型をベースとした世界観を作り上げている。サイト(
http://chrysolina.digi2.jp)には、いくつかのショートストーリーがあり、「それらが増えていけば世界観はリンクしていく」とオーナーは語ってくれた。Ma.K.もそうだし、アニメ『機動戦士ガンダム』のプラモデル「モビルスーツバリエーション」 (MSV) もそうだといえるアプローチだ。
※具合的な設定などを考えなくても、意匠から読み取れる情報が膨大。ゆっくりと眺めていく人も多かった
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「Kampf Riesigen Mars 1941」のブースでもオリジナル作品が展示されていた。ベースは第2次世界大戦時の兵器や2足歩行兵器といった具合で、キットのほかパンフレットや小説など、完全にひとつの複合コンテンツになっている点がユニークだ。Webサイトはないようで、会場でチェックするほかないストログスタイルだが、造形の端々から設定を読み取れる高いレベルのものばかりだ。
※キットのほかに、紙資料がとても豊富なのが印象的だった。説得力を持たせる造形テクニックは当然ながら秀逸。渋い塗りがステキである
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◆企業ブースでは新作フィギュアの参考出展も
WFには企業ブースもあり、こちらも車両からフィギュアまで豊富だ。ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』のブームにより、旺盛する美少女フィギュアと往年の定番ジャンルであるミリタリーの融合がなかなか興味深い。静岡連合の動きもそれに合わせて活発であり、バンダイのアーマードガールズプロジェクトからは、大和の建造開始が発表されている。
※アーマードガールズプロジェクトの大和のサンプルと、人のサイズに合わせて用意された艤装
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プロ・アマ問わず、多種多様な造形物が集まるワンダーフェスティバルは、毎年夏と冬の2回開催されている。男子マインドをくすぐられたという方は、今夏開催のWFに行ってみてはいかがだろうか。 <取材・文・撮影/林 佑樹(
@necamax)>