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オープン戦で見えたマー君の課題とは?

田中将大

「印象的な登板」と伝えたMLB公式サイト

 野球ファンが待ち望んでいたヤンキース・田中将大投手(25歳)が、メジャーのオープン戦でデビュー登板を果たした。

 現地時間3月1日にヤンキースのキャンプ地、フロリダ州タンパで行われたフィリーズ戦で、3番手投手として登場したマー君は、見事に2イニングを無失点の好投。先発のCCサバシア(年俸23億円)、二番手で登場した黒田博樹(年俸16億円)と合わせ、三人の年俸総額60億円超という豪華リレーの中、マー君は挨拶代わりのナイスピッチングを披露した。

◆豪華メンバーに囲まれた「夢の舞台」で好投

 対戦相手は名門フィラデルフィア・フィリーズ。最近では’07年から5年連続でプレーオフに進出し、’08年と’09年にはナ・リーグを連覇した強豪だが、直近2シーズンは主力陣の高齢化が進み苦戦中。この試合もフィリーズ側からすると自軍キャンプ地からのバス移動となる“遠征試合”のため、ライアン・ハワード、チェイス・アトリーら、リーグを代表する好打者は不参加だった。

 しかし昼下がりのスタンドは、ヤンキースの先発三本柱が揃い踏みとあって超満員。’09年のワールドシリーズの再現となった好カードは、あの松井秀喜氏がDH(指名打者)として猛打を奮ってシリーズMVPを獲得し、4勝2敗で世界一に輝いた縁起の良い相手。しかも松井氏本人が臨時コーチとしてユニフォーム姿で参戦するオマケ付き。生きるレジェンド、イチローも7番ライトでスタメン出場と、マー君のデビュー戦は夢のような舞台が整った。

 肝心の投球内容も、豪華な舞台に相応しいナイスピッチングだった。サバシア(2回2安打)、黒田(2回1安打)の後を受け、5回から3番手で登場したマー君は2イニングを投げ、打者8人を相手に、短打2本、3奪三振と好投した。

 試合前に「この時期に最も大切なのは、打者と対戦すること。先発か中継ぎかは問題でない」と語った通り、中継ぎデビューを意に介すこともなく、マー君は上々の滑り出しを見せた。大リーグ公式サイトもトップ記事で「TANAKAが印象的な初登板」と、マー君のデビュー戦を大々的に伝えた。

 とはいえ、2イニングで32球を投じたマー君の球数は、かなり多い。メジャーでの初マウンドだっただけに、様々な球種や打者の反応を試したこともあっただろうが、この点だけは気がかりだ。公式記録に記されるGO-FO(ゴロアウト・フライアウト)表示を見ても、揃って2イニングずつ投げたサバシア(2-2)、黒田(2-0)、に対して、マー君は(0-3)と、ゴロアウトが1つもなかったことが分かる。

◆守備のリズムを生む「ゴロアウト」。理想は黒田の投球術

 そこでお手本にしたいのは、2番手で登場した黒田のピッチングだ。メジャー6年で68勝を挙げている黒田も、この日が今季の初登板だったが、32球を投じたマー君とは対照的に黒田はわずか17球で6つのアウトを奪ってみせた。内野安打で出塁を許したランナーも、次打者をショートゴロで併殺するなど、黒田の省エネピッチングに、マー君は大いに学ぶことがありそうだ。

 プロ1年目の’07年こそ、リーグ最多の68与四球を与えたマー君だが、その後の制球力は飛躍的に進歩し、昨年のWHIP(1イニングあたりに許す出塁数)は先発投手としては圧巻の0.94(もちろんリーグ最高)をマークするなど、この日の登板を見る限り、マー君にコントロールの心配は無用だろう。

 マー君の次なる課題は、全体的に高目のボールが多かった今日の初登板から、細かな制球の精度をいかに高められるか。低目への投球が決まれば、おのずとゴロアウトは増え、長打を喰らうケースも避けられる。笑顔が溢れた試合後の会見でも「ここには憧れでなく、勝負に来ている」とコメントした時だけは、締まった表情に一変した。世界中の野球ファンが注目するマー君の新たな挑戦は、ついにはじまった。

<取材・文/スポカルラボ>
http://www.sclabo.net/
海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!ではMLBの速報記事を中心に担当

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