K‐POPアイドルはなぜ幸せになれないのか?
若者たちにとって芸能人が憧れの職業であることに日本と韓国の意識の差はない。だからこそ、明日のスターを目指して切磋琢磨するわけだが、「競争率の厳しいオーディションを合格してデビューできたからといって、幸せになれるのはほんの一握り。特に韓国アイドルのほうが、業界の体質的に残酷物語が生まれやすい」と語るのは、K‐POP事情に詳しいフリーライターの小野田衛氏。
韓国芸能界が抱えている問題点としてまず思い浮かぶのが、東方神起、KARA騒動の際に注目された「奴隷契約」問題だが、「あまり知られていないが、それ以上に深刻な問題がある」と小野田氏が警鐘を鳴らすのは、以下の2点だ。
1. ハードすぎる練習と芸能ジプシー
2. 暴走するネチズンによる自殺
「韓国アイドルを目指す練習生たちの練習内容は熾烈を極めます。一日10時間以上のトレーニングはザラ。歌やダンス、演技などのトレーニングはもちろんのこと、海外進出のために外国語も覚えさせられます。一度、練習生として事務所に入ってしまえばもちろん恋愛はご法度。携帯電話を没収され、体重チェックを行なって少しでもオーバーすると減量指令が下されるのです。朝から晩までレッスンばかりで、生活のすべてを歌手になることに捧げることになると、当然、学校に通えないケースも出てきます。厳しい練習生期間を経てデビューしても、決してハードな練習が終わるわけではありません。深夜にまで及ぶテレビ・ラジオの収録やコンサート活動の合間を縫って、歌やダンスの練習に明け暮れている。メンバーは同じ宿舎に寝泊まりし、結束を高めていくわけです」
事実、11年8月に日本デビューしたSecretは、「日本で1位を獲ったら社長が携帯電話を返してくれるらしいので、私たちが1位になれるように応援してください」と語り、集まったファンの同情を買った。練習生期間ならいざ知らず、SecretはKARA、少女時代に続く人気グループ。いかにスパルタ式の監視体制下にあるかが窺える。韓国のトーク番組を観ていると、「3年以上、実家に帰っていない」「昨年は母親に会えなかったから、今年こそは会いたい」などとアイドルたちがこぼすことがある。
「韓国アイドルのなかには、もともと違う事務所の練習生だったのが、競争に脱落して他の事務所に移るというパターンが実に多い。練習生を辞めても周囲はバリバリの受験社会だからついていけず、自分が歌やダンス以外は何もできないことに気づくのです。こうして似たような事務所を渡り歩く“芸能ジプシー”が急増し、さらに競争を激化させています」
日本以上に“再チャレンジ”が厳しい韓国社会では、夢追いのリスクも高いといえる。
続いて後編では、もう一つの問題点である一部のファンによる“ネット監視”について解説する。
⇒【後編】https://nikkan-spa.jp/65957
取材・文/スギナミ
【参考図書】
『韓流エンタメ日本侵攻戦略』
小野田 衛・著 扶桑社新書 本体720円+税
日本の若者たちはなぜK-POPに熱狂するのか?日本人が知らない韓流ビジネスの正体、韓国芸能界の裏側を徹底した現地取材をもとに考察。
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