ダライ・ラマ法王、パレスチナ問題に心痛める
22日、チベット亡命政権のダライ・ラマ法王は、インド・ダラムサラ(ヒマチャールプラデシュ州)のカーングラ空港で、ANI通信(インド)のインタビューに応じ、パレスチナ自治区ガザで続くイスラム原理主義組織ハマスとイスラエル軍の戦闘についてコメントした。
「考えられないことです。すべての主要な伝統宗教――イスラム教、キリスト教、ヒンドゥー教はもちろんのこと、ジャイナ教、仏教など、これらすべてが私たちに慈悲、愛、赦し、忍耐というものを説いている。それなのに、ちゃんとした信仰をもっている人がそのような暴力に関わるというのは、一体なぜでしょうか。非常に悲しいことです」
ダライ・ラマ法王は7月6日、79歳を迎えたばかり。今年は、北インド・ラダック地方の旧首都レーにて、集まった10万人以上の人々に説法中であったが、途中、お誕生日セレモニーが行われた。
熱心なチベット・サポーターで知られるリチャード・ギア氏も現地で、お祝いのスピーチを捧げた模様。
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このダライ・ラマ法王の誕生会パーティは毎年、世界中で同時に開催されている。
日本の会場では今年、この方が……
我らが週刊SPA!巻頭コラムをご執筆中の勝谷誠彦氏が参加者を代表してスピーチ。
勝谷氏は今から10年ほど前、チベットの首都ラサからカイラス山を旅し、その巡礼路を血を吐きながら歩く、という体験をしている。その体験を小説『ディアスポラ』に発表するなど、実はチベットとは深い縁がある。
「中国共産党独裁政権は何を勘違いしたか、どんどん前へ出てきて、世界中から――あれだけ関係のよかったEUからも――『ああ、こういう国だったのかこいつらは』と思われた。その結果、いよいよ世界で孤立してきました。今があの国のピークです。
それ対して、新疆ウイグルなど、イスラムの方々のように、武装し抵抗するところもある。それはそれでひとつの形です。しかし、チベットはずっと、自ら身を焼くという抵抗しかしていない。こうして話していても涙が出てくるほどです。
しかし、ダライ・ラマ法王14世猊下という方がずっと黙って座して非暴力を貫きつつ、それでも我々はここにいるのだ、ということを示されてきたことは、この先の長い歴史にどれほど残ることでしょうか。
おそらく100年後の世界地図は変わっています。チベットは独立国になっています。ひょっとすると新疆ウイグルも独立しているかもしれません。もうすぐです! あの何を考えているのか、韓国と一緒になって日本の悪口を言っている、共産党独裁政権はもうすぐ自ずとつぶれます。そこまで我慢しましょう。それこそがまさに猊下もおっしゃっている本当の仏様の心だと思うのです。いや、我慢と言ってはいけない。我慢も楽しむのが仏教なのですから。
そうして、猊下がおっしゃってきた言葉が、ほら見ただろう、と現実のものとなる日がくると確信しています」
と、中国政府の民族弾圧による過酷な状況への深い理解を示すとともに、ダライ・ラマ法王のご長寿を願い、「チベットのことをこんなに考えてくれる人がいる、涙が出そうになった」(タシ・ギャムツォさん・37歳)など、参加した多くの在日チベットの人々の感動を誘っていた。
来年80歳のダライ・ラマ法王は、日々、精力的に世界中を回り、仏教にもとづく非暴力と慈悲の教えを説き続けている。チベット問題に関しては、最大の理解者ともいえるのがアメリカだが、23日、国連の人権理事会が採決した、イスラエルの軍事作戦を非難する決議案には唯一、反対したことが報じられた。
法王の平和への祈りが世界に届くには、まだまだ前途多難だ。
<取材・文/日刊SPA!取材班 取材協力/Kazuhiro Nakahara(インド)>
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