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パチスロ出玉規制の内容でわかった警察の本気度

パチスロ出玉規制の内容でわかった警察の本気度

こんなドル箱タワーを見ることもなくなるかと思うと、ファンとしてはかなり寂しい

 AT機の登場で出玉性能が極限にアップした5号機パチスロ。その圧倒的な出玉感は4号機末期を彷彿とさせつつあった。各地のホールは朝から並ぶ客も増え、懐かしきパチンコ鉄火場時代の再来を予感させたのだが、こうした射幸性の高い状況をさすがの当局は見過ごさなかった。  8月28日、警察庁は実質的にAT機禁止につながる「新規制」を、パチンコ・パチスロメーカーの業界団体である日電協(日本電動式遊技機工業協同組合)と日工組(日本遊技機工業組合)に通告した。新規制となる「型式試験の変更」の内容は「常にどの押し順でも最低出玉率55%を超えること」であった。  パチスロファンの人生を左右しかねないこの新規制。現在パチスロメーカーで開発者として活躍しているA氏と、パチンコ業界に詳しいジャーナリストのPOKKA吉田氏にその舞台裏を聞いた。  週刊SPA!本誌(10/14・21合併号)でもPOKKA吉田氏が述べたように、ある特定の機種や「ベルリプレイ(見た目はベルだが内部的にリプレイ扱いとなる小役)」がヤリ玉にあがったと噂されているが、実際はどうなのだろうか。 「“噂の機種”はスペック的にブッ飛んだところがあるから、それを規制の理由にしている人が結構いるけど、私は関係ないと思ってます。『ベルリプレイ』についての警察庁の論点は、『遊技の結果を誤認する』ってところ。そのため不適合にしていると各メーカーにお達しがあっただけですから、今後はベルリプレイを使わなければよいだけの話です」(POKKA吉田氏)  というように、特定の機種が……というわけではないようだ。では、実際にパチスロを開発している側は、今回の規制についてどのように感じたのだろうか。 「型式試験というのは、国家公安委員会の指定機関である保通協(保安通信協会)が実施している新台の性能に関する試験で、規定値以内に出玉が収まらないと不合格になる。メーカーとしては“出る台”だとユーザーに思われないと売れないから、ここをいかにだましだましかいくぐるかが勝負。今回の新規制の話については寝耳に水だったけど、規制が入ること自体は……まぁ、遅かれ早かれやむをえないだろうなぁと思ってた」(A氏)  ただ、今回の規制にかける警察庁の“情熱”はこれまでのものとはひと味もふた味も違ったようだ。 「今まで新規制が入るときは、◯月×日までは今までのスペックで何回でも型式試験を受け付けますよっていう具合に“猶予期間”があった。ここで言う猶予期間というのは『型式試験方法の変更(どの押し順でも最低出玉率が55%という規定)』がアナウンスされてから9月16日に実施されるまでのこと。実際は8月29日(金)に警察庁からの通達、その後で一番早い『型式試験予約申込日』は9月2日(火)になるんだ。土日を入れても3日しか猶予がないわけで、その間に作り変えて書類揃えて試験予約するのはほぼ不可能なんだよ。よって猶予期間なしってことになる。警察の本気度をヒシヒシと感じたね、今回ばかりは」(A氏)  今回、この猶予期間については各社2回まで旧来のスペックでも試験が受けられるという話だ。 「こっちの猶予期間は2015年11月までの『出玉関係のサブ基板からメイン基板への移行』と『ペナルティ』についてのことで、先述した猶予期間とは意味が違う。あと2回というのは「1型式で2回」ということなので、名義替え(例:北斗の拳A、北斗の拳Bみたいなの)で何度も持ち込めると、うちの会社は判断している。ちなみに、今までは名義替えが3回までいけたけど、もし落ちたらそのあと1か月の期間を開けないと申請できなかった。2015年11月までの間に、その1ヶ月開けが適用されるかは、今のところ不明だね。まぁ、恐らくされるだろうけど……。でもね、今までAT機の検定は、同一の機種を名前を変えて何度も出していた。出過ぎたからってプログラムなんてほとんどいじらない。まぁ、あんまり落ちたら微調整はするけど(苦笑)。巷で人気の機種なんかには10回以上も申請し直して、それでやっと通ったものなんてザラ。試験で120%以下の出玉だったら通るわけだから何度も持ち込んで“たまたま出なかった”から型式試験に適合となる(型式試験の適合とは一般的に検定通過と言われる)。要するに高設定の“逆噴射”を期待して持ち込むんだ。保通協も名前を変えただけの機種だって知っていて『あ、名前変えたのね、ハイハイ』みたいなね。だから、たった2回だけの猶予でAT機の適合を受けるのは、まず不可能だってこと」(A氏)  つまり、今まではどのメーカーもやっていた、“検定に合格するまで何度も同じ機種を試験に出す”という方法が、今回の猶予期間中は使えない。開発者として“出る台”を型式試験に適合させる難しさはあるという。では各メーカーが行う“検定通過の裏ワザ”とは何か。 「今の試験ってAT機だと、例えば打ち方をランダムに押させて、最低出玉率の55%をクリアしていた。でも実際のホールだとペナルティがあるから、お客さんは左リールからしか押せないわけでしょ。それだと通常時の出玉率は10%を切ることもある。これを新規則ではAT中だろうと関係なく常に最低出玉率になる打ち方にして、それでも55%を超える台を作りましょうねって話。この場合、今あるような低ベースのAT・ART機を作ることは不可能」(POKKA吉田氏)  AT機そのものが規則の穴を突いていたというわけである。 「そもそも5号機になってから、型式試験の適合率がずっと低いままなんです。このことについて警察庁はここ10年間、適合率の改善を各メーカー組合に言い続けてきた。出玉率の検査では1万7500Gで55%~120%の間にするという項目があるのですが、試験不合格の理由の大半がこの120%の出玉率を超えてしまう場合。つまりは上限ギリギリの台ばかり作ってきたということ。警察庁も『いいかげんにしなさい』となりますよ」(POKKA吉田氏)  では、今回の規制の通告を受けて、業界団体の対応はどうなのだろうか。 「9/17に組合の自主規制として出たのが『周辺(サブ)基板を主(メイン)基板へ移行すること』と『ペナルティの規制』です。メイン基板というのは大当たりや小役の当否を判定する部分。サブ基板では、メイン基板の結果を押し順ナビなどの演出で表現しています。今までサブ基板は出玉に関係ないとされてて検査を受けなかったけど、メイン基板に移行されると検査が必要になる。来年の12月以降に出るART機は、ART性能をメイン基板に完全移行させた機種じゃないとダメ。じゃあARTの定義って何? とか、どうやってメイン基板に移すのか? などは今決めている最中です。ペナルティについても自主規制の入口の話なだけ」(POKKA吉田氏) 「ペナルティについても業界団体は“優しいペナルティ”を警察庁に提案したんだけど、案の定ダメ(笑)。『ペナルティ全面禁止の執行猶予期間(2015年11月まで)は設けるけど、その間に緩和したペナルティをやっていいわけじゃなくて、さっさとペナルティを止めろ』ってことを察しろやってこったね」(A氏)  自主規制の本質的な部分はまだ決まってないそうだが、この基板移行の問題について開発者にはどう映るのだろうか。 「猶予期間の来年11月までというのは、開発側からするとサブ基板でやることをメイン基板で扱えるよう、技術やノウハウを修得する期間だと感じている。今のところその技術があるのは一社だけと言われていて、他メーカーは、今からがんばってその技術を作る必要がある」(A氏)  来年の12月以降、新規制と旧規制の2つの台が混在する状況について、お二人はどう考えているのだろう。 「2種類の台がホールに混在するのは誤解を与えるという理由で、警察庁がケチを付ける可能性がある。ひょっとしたら今のAT機の設置期間がもう少し短くなるかもしれない」(A氏)  開発者としてか、危機感のあるA氏は規制問題がより厳しくなることを示唆。さらに出玉の規制について、もう少し具体的なことも…… 「純増2枚くらいまでなら適合するのでは……と言われてるから、完全に冬の時代が来るとはあまり考えちゃいないかな。5号機初期くらいの出玉感とか言われてるけど、もう少しやれると思う。新鬼武者くらいの出玉は適合するんじゃないかな」  POKKA吉田氏はジャーナリストならではの視点から、警察の別の狙いについて言及をする。 「12月以降は旧規制の台が新台として出なくなる。ただ、中古市場だと遊商組合加盟販社の書類でその台が設置できる。でも、新台だとNGで中古だと大丈夫だというのはおかしな話です。だから警察庁としては今の中古流通にも制限をかけたい考えがある。販社組合からすると関係ないって話だけど、今後どう転ぶかはわからないですね」(POKKA吉田氏)  まだまだ問題山積みの新規制。しかし、現行のAT機が打てなくなる日はそう遠くない話だ。パチスロファンとしてできることは、万枚を目指し、悔いのないよう今のうちにAT機を打ち倒すことだけ……なのかもしれない。 <取材・文/SPA!ギャンブル特捜班>
週刊SPA!10/14・21合併号(10/7発売)

表紙の人/石原さとみ

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