新日本プロレスの動画配信サービスってWhat?――「フミ斎藤のプロレス講座」第18回【後編】

 ついにというか、いきなりというか、かなりすごいモノが出現した。テレビ朝日×新日本プロレスの“最強タッグ”が『新日本プロレスワールドNJPW WORLD』を開局した。

 “開局”とはテレビ局とかラジオ局とか、郵便局とか水道局とか“局”と名のつく機関を開設することだから、厳密にいうと“開局”という表現は正しくはないけれど、こういう新しいメディア(とその内容)をカテゴライズするためのちょうどいい単語があるのかといえば、いまのところこれといったものがない。“楽しみ放題サービス”“見放題サービス”といったやや抽象的なフレーズが用いられているのはそのためだろう。

 新日本プロレスワールド(以下NJPW WORLD)は、かんたんにいえばインターネットの動画配信ストリーミングサービスで、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの画面からいつでもどこでも新日本プロレスの映像が好きなだけ楽しめる“有料サイト”である。

⇒【前編】はコチラ

斎藤文彦

斎藤文彦

 NJPW WORLDの全体像を把握するためには“便利タグ一覧”のなかの“年代”というタグがひじょうに便利だ。“70年代=39”“80年代=153”“90年代=205”“00年代=108”“10年代=535”と年代順にレイアウトされたタグにはそれぞれの時代ごとの収録試合数が示されていて、現時点では70年代から10年代までの5デケードで全1040試合分の映像がこのサイトにアーカイブされているのがわかる。コンテンツは今後、随時アップデートされ、更新・追加されていくという。

 40代以上のマニア層にとっては70年代、80年代、90年代の試合映像(と選手)の検索がひじょうに重要な作業になる。“アントニオ猪木”で検索するとあまりにも膨大な数の試合映像がヒットしてしまうので――それはあまりもアニアックな発想かもしれないが――試しに“モハメド・アリ”“ボブ・ループ”“マクガイヤー兄弟”といった別のキーワードで検索してみると「該当する動画がありませんでした」という文字が出てくるから、猪木対アリの異種格闘技戦(1976年6月26日=日本武道館)、猪木対ボブ・ループのNWFヘビー級選手権(1979年1月12日=川崎)、猪木対“世界一の超肥満双生児”マクガイヤー・ブラザース(1974年1月、1975年1月に2度来日)の映像はここにはないということが判明したりする。B・ループのたったいちどのタイトルマッチは猪木の全盛時代の“隠れた名勝負”といわれている。

 猪木対ジャック・ブリスコのNWFヘビー級選手権(1979年5月10日=福岡)を検索したら、この試合映像は誤って“1975年”のブロックに収録されていた。“高田信彦”で検索しても“高田延彦”で検索してもヒットいない高田信彦対アソール・フォーリーのシングルマッチ(1983年8月13日=カナダ・カルガリー)の映像が“燃えろ!新日本プロレス特集”Vol.59に収録されているという例もあった。ちなみに、新日本プロレスのヤングライオン時代の高田のベストマッチと評される谷津嘉章とのシングルマッチ(1984年4月19日=蔵前国技館)はNJPW WORLDにはまだアップされていない。

 今後、追加・更新が予定される“特集”にはぜひ“NWF選手権アーカイブ”“NWA北米タッグ選手権アーカイブ”“マディソン・スクウェア・ガーデン特集”“ロサンゼルス・オリンピック・オーデトリアム特集”“ヤングライオン時代の前田日明”“ヤングライオン時代の高田延彦”“ヤングライオン杯特集”といった70年代後半から80年代前半の映像を――40代以上のマニア層向けにではなく――いまの若いプロレスファンを対象とした「昭和史講座」「昭和人物史講座」「現代史講座」としてアップしてほしい。映像アーカイブのほんとうの存在価値、存在理由はそういうところにあるのではないだろうか。

 新日本プロレスの木谷高明オーナー(ブシロード社長)は、ひと足先にアメリカで開局したWWEネットワークとNJPW WORLDを比較しながら「(WWEネットワークの)年内契約件数の目標が100万世帯で、現在70万世帯。英語圏と日本語が通じる地域の比率がだいたい10対1だから、NJPW WORLDはまず契約世帯数10万件をめざす」とコメントしている。現在、シンガポール在住の木谷オーナーは、スマホ/タブレット/スマートテレビによる映像配信事業をアジアにおけるマーケティングのかなめと考えているようだ。

 NJPW WORLDの映像配信サービスがスタートした翌日(現地時間=12月1日)、アメリカでは非公式の“NJPW WORLDをフル活用するための操作マニュアル・サイト”(英語版)が立ち上げられた。アメリカ、ヨーロッパのネット世代のプロレスファンの多くは新日本プロレス、というよりもNJPW(New Japan ProWrestling)をWWEに対するオルタナティブというふうにとらえている。

 いま10代の若者がオトナになったとき、彼らは――親の世代までがそうであったとしても――自宅のリビングルームに置くための大型テレビはもう買わないだろう。子どものころからパソコン、スマホ/タブレットで動画を視聴することがあたりまえの世代の地球人は、いまから100年もまえに実用化された“古典的”なテレビはもう必要としないのかもしれない。やがて、パソコンとテレビは完全に合体する。アメリカのWWEネットワークも、日本のNJPW WORLDも、そういう世代のためのいちばん新しい形のメディアの提案なのである。

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

※このコラムは毎週更新します。次回は、12月10~11日頃に掲載予定!

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