テリーがやって来る、マスカラスがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!――フミ斎藤のプロレス講座・第17回【後編】

 ことし最後の超大物スーパースター来日である。東京愚連隊(とうきょう・ぐれんたい)の自主興行12・11“TOKYO DREAM2014”後楽園ホール大会に“リビング・レジェンド”テリー・ファンクと“仮面貴族”ミル・マスカラスがやって来る。

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斎藤文彦

斎藤文彦

 “TOKYO DREAM2014”のプランニングは、マスカラスと船木誠勝にタッグを組ませようという企画からスタートした。ヒントはW-1の地方巡業中に船木と交わしたとりとめのない会話だった。「子どものころ、ミル・マスカラスにあこがれていた」という船木のコメントを耳にしたNOSAWAは「だったら、試合、やっちゃえばいいんですよ」と船木に伝えた。もしもそれがほんとうに船木の“夢”であるならば「その夢、かなっちゃいますよ」と考えるのがNOSAWAのNOSAWAらしさである。

 NOSAWAは、マスカラスとタッグを組む船木にひとつだけリクエストを出した。それはNOSAWAが考えるところのいちばんカッコよかった時代の“パンクラスの船木誠勝”のイメージをこの試合で再現することだった。

 “パンクラスの船木誠勝”のイメージとは、船木が「あしたからまた生きるぞ!」と叫んだ日(96年9月7日、東京ベイNKホールでのバス・ルッテンとのキング・オブ・パンクラシスト選手権)の映像であることはいうまでもない。NOSAWAは船木に“あの日のあの色”のショートタイツ、ニーパッド、レガースを身につけてリングに上がることを提案した。船木は「わかった」と返答したという。

 マスカラス&テリー&船木の対戦チームのメンバーに“関節技の鬼”藤原喜明(パートナーはNOSAWAとカズ・ハヤシ)が入っているのも“TOKYO DREAM 2014”の“DREAM”のひとつで、ここには藤原組長対マスカラス、藤原組長対テリー、藤原組長対船木という3つの“夢の対決”が埋め込まれている。いまから4年まえ、“マスカラス・フェスタ”という興行で6人タッグマッチ(マスカラス&天龍源一郎&エル・パンテーラ対藤原&アルカンヘル&NOSAWA論外)に出場した藤原組長は「オレ、いちどもマスカラスに触らなかった」と試合後、不満を口にした。藤原組長ほどのベテランでも、レスリング・スタイルのちがいとは関係なく、マスカラスのような“天然記念物”といちど肌を合わせてみたいという感覚があるのだろう。東京愚連隊のリングとはそういう“未知との遭遇”を現実化する場所でもある。

 マスカラス&テリー&船木の“夢のトリオ”との6人タッグマッチというシチュエーションではマスカラス対NOSAWA、テリー対NOSAWA、船木対NOSAWAという3通りのシングルマッチも実現する。マスカラス対NOSAWAはルチャリブレの王道、テリー対NOSAWAはECWスタイル(ハードコア・スタイル)のオマージュ、船木対NOSAWAはUWFスタイルとパンクラス・スタイルのシミュレーションになる。NOSAWAはこの興行をプロデュースした者の恍惚と不安、あるいは責任として“伝説の男たち”に気持ちよくこてんぱんにされるのだろう。

 NOSAWA自身は“TOKYO DREAM”以外では“NOSAWA BOM-BA-YE” “TOKYO LOVE” “TOKYO STARRCADE”“TOKYO PRIME TIME”といったコンセプト興行を同時進行するいくつかの“長編ドラマ”としてプロデュースしている。ことしの4月の“TOKYO LOVEIV”新宿FACE大会では、いままでいちども接触したことのなかった“昭和レジェンド”との遭遇として藤波辰爾との初対決(タッグマッチ)を実現させた。

 昨年8月、“TOKYO PRIME TIME”新宿FACE大会でおこなわれた“有刺鉄線ボード・ストリートファイト・トルネードタッグ・デスマッチ”大仁田厚&田中将人対NOSAWA論外&KIKUZAWAのタッグマッチからスタートした大仁田グループとの因縁ドラマは、NOSAWAのもくろみどおり“電流爆破の物語”に発展。昨年10月、新潟でラインナップされた大仁田&田中対高山善廣&NOSAWAの“有刺鉄線電流爆破デスマッチ”をプロローグに、ことしは5・14“湘南大花火”茅ヶ崎大会での大仁田&保坂秀樹&矢口壱琅対高山&藤原喜明&NOSAWA、8・10“山形大花火”山形大会での同一カードの再戦、11・3熊本での大仁田&田中&鷹木信悟対高山&金村キンタロー&NOSAWAまでこの1年あまりのあいだに「4回も電流爆破に飛び込みました」(NOSAWA)。

 “有刺鉄線電流爆破デスマッチ”については「一生にいちどの経験」、“電流爆破”の肉体的な衝撃についてもはじめのうちは「花火大会みたいなもの」ととらえていたが、試合をくり返していくうちに「本来のプロレスとはちがう緊張感。デスマッチの緊張感。あ、オレ、ここで死ぬかもしれない」という「やってみなければわからない感覚」を抱くようになったのだという。パートナーの高山もこれと同じようなことをコメントしている。

「オレらを受け入れてくれた大仁田さんに感謝している」(NOSAWA)

 アイディアはまだまだたくさんある。NOSAWAが海外遠征中にお世話になった“プエルトリコの帝王”カルロス・コロンをVIP待遇で東京愚連隊興行に招へいするつもりだし、サブゥーとレイヴェンとサンドマンを呼んで“ECW愚連隊”をプロデュースする計画を立てている。サンドマン対鈴木みのるのシングルマッチ、レイヴェン&NOSAWA対バラモン・シュウ&バラモン・ケイの“TLCマッチ”なんかどうだろう。NOSAWAにとっておもしろいプロレス、NOSAWA自身が観てみたいプロレスこそ、きっとみんなが喜んでくれるプロレスなのである――。
 
文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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