雑学

新日本プロレスの動画配信サービスってWhat?――「フミ斎藤のプロレス講座」第18回

新日本プロレスワールド

新日本プロレスワールドHPより

 ついにというか、いきなりというか、かなりすごいモノが出現した。テレビ朝日×新日本プロレスの“最強タッグ”が『新日本プロレスワールドNJPW WORLD』を開局した。

 “開局”とはテレビ局とかラジオ局とか、郵便局とか水道局とか“局”と名のつく機関を開設することだから、厳密にいうと“開局”という表現は正しくはないけれど、こういう新しいメディア(とその内容)をカテゴライズするためのちょうどいい単語があるのかといえば、いまのところこれといったものがない。“楽しみ放題サービス”“見放題サービス”といったやや抽象的なフレーズが用いられているのはそのためだろう。

 新日本プロレスワールド(以下NJPW WORLD)は、かんたんにいえばインターネットの動画配信ストリーミングサービスで、パソコン、スマートフォン、タブレットなどの画面からいつでもどこでも新日本プロレスの映像が好きなだけ楽しめる“有料サイト”である。

 アメリカではWWEがことし2月にWWEネットワークを開設した。WWEネットワークの“設計図”になったのはMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)のMLBAM(メジャー・リーグ・アドバンスト・メディア)で、動画配信サービスのプロバイダー・システム上でもWWEネットワークとMLBAMはパートナー契約を結んでいる。日本のプロレス団体、というよりも日本のプロスポーツ界でこういった動画配信サービスを導入しているのは現時点では新日本プロレスだけだ。NJPW WORLDの公式サイトのトップページにはこんなコピーが記されている。

“これさえ加入しておけば間違いない、新日本プロレス超絶満喫サービス!”

“ご登録していただくと、新日本プロレスのふんだんなコンテンツがお楽しみ頂けます。このサービスと一緒に、行こう!新日本プロレスの真・黄金時代へ!”

“新日本プロレスの主要大会を完全配信!”

“渾身の月額999円(税込)!消費税が上がっても、値上げは致しません!!”


 “新日本プロレスワールドとは?”というアイコンをクリックして、そのまま下までスクロールしていくと“月額999円(税込)で見放題!”のサービス内容が表示される。月額料金の支払い方法はクレジットカード決済か毎月の携帯電話料金への課金という形になるが、スマホやパソコンの画面に必要事項をひとつずつ打ち込みながら加入契約する感覚(というか不安あるいは安心感)は利用者の世代によってかなり異なる。若い世代のネットユーザーにとってはもうあたりまえのことなのかもしれないが、いわゆる中年の一般消費者――たとえば筆者など――にとってはこういう画面上の動作そのものがわりとハードルが高かったりする。

 トップページ画面の左上コーナーのNJPW WORLDのロゴのすぐ下には“まずは検索だ!”という検索用ウインドーがある。その下には“LIVE配信”“過去の名勝負”“すべての動画”“オリジナル”“特集”“コラム&レポート”といったカテゴリー別のハコが並んでいて、そのまた下にはキャプテン・ニュージャパンが「試しに押してみてくれ!」と語りかけるアイコンとともに“選手名”“年代”“会場”“実況解説者”“タイトルマッチ”といった“便利タグ一覧”がレイアウトされている。

 “LIVE配信”はいうまでもなく現在進行形の新日本プロレスの試合映像の完全配信で、どうやらこれがNJPW WORLDの最大のセールスポイントなのだろう。月額999円の視聴料金で新日本プロレスの主要大会の第1試合からメインイベントまでがノーカットの“生中継スタイル”で観ることができるというシステムはたしかに魅力的だ。ただし、NJPW WORLDの加入契約件数の増加とともに通常の興行の観客動員数、つまり興行収益そのものに影響が出てくる可能性も指摘されている。

 WWEネットワークは現在、月額9ドル99セントの視聴料金でこれまで月イチで開催していたPPVイベント――ケーブルTV、衛星チャンネルでの契約式有料放映で従来の視聴料金は番組ごとに35ドルから60ドル――を動画配信しているが、近い将来、旧型のPPVイベントは“絶滅危機品種”になるのではないかといわれている。わかりやすくいってしまえば、異なるメディアによる同一コンテンツの“共食い状態”である。

 “過去の名勝負”は“闘魂シリーズ&世界最強タッグ戦”(1973年10月14日=蔵前国技館)から“POWER STRUGGLE”(2014年11月8日=大阪府立体育会館)までの過去41年間の映像アーカイブだ。新日本プロレスが発足したのは1972年(昭和47年)1月で、テレビ朝日(当時NET)が新日本プロレスの中継番組をスタートしたのは1973年(昭和48年)4月だから、やや蛇足になるが、公式サイトに明記されている「新日本プロレス45年分の試合映像」というコピーは正確ではない。おそらくこれは『ワールドプロレスリング』――当初は毎週水曜夜9時から1時間枠で旧日本プロレスの試合をオンエア――が放送開始となった1969年(昭和44年)7月から現在までの“45年分の試合映像”を指しているのだろう。

 “燃えろ!新日本プロレス特集”は、累積180万部超の大ヒットとなったDVDマガジン『燃えろ!新日本プロレス』Vol.1からVol.67までの完全配信版(エクストラは含まれない)で、この特集部分にはものすごいボリュームの試合映像が収録されているが、NJPW WORLDではこれらの映像が1試合ずつにブロック分けされている。1試合あたりの時間は――アントニオ猪木対ビル・ロビンソンの60分フルタイム映像という例外はあるが――だいたい15分から20分程度で、ひょっとするとこの“15分”から“20分”くらいがネットユーザー=現代人の集中力の限界ということになるのかもしれない。

⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/759287

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。

※このコラムは毎週更新します。次回は、12月10~11日頃に掲載予定!

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