正月こそ観たい! 北朝鮮をネタにした映画5本
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記暗殺を題材にしたコメディー映画「ザ・インタビュー」が、ソニー子会社へのサイバー攻撃や、上映中止から限定公開に至る一連のドタバタとともに話題を呼んでいる。映画がここまで国際問題になる例は非常に珍しいが、ここ数年実は北朝鮮が悪役の映画が相次いで製作されているのだ。
◆北朝鮮軍がアメリカ全土を占領!
アメリカ全土が北朝鮮の占領下に置かれるという荒唐無稽な設定のアクション映画「レッド・ドーン」(’12)はその代表格といえる。
大量の輸送機からパラシュート部隊が降り立つ導入部からして、どう考えてもあり得ないシチュエーションなのだが、さしたる説明はなく、アメリカ側はなす術がないまま北朝鮮の支配下に入り(なぜ?)、若者達が山に逃げ込んでレジスタンス活動に乗り出す(なぜ?)。
それもそのはず、この映画は元々中国を敵役として製作していたもので、大部分を撮影し終えた直後に中国側からクレームが付き、急きょ国旗などの装飾をCGで北朝鮮のものに修正した経緯があったからだ。
ついこの間北朝鮮が「ザ・インタビュー」について「不純な反動映画」との談話を発表したのとどこか重なる話だ。
作中における北朝鮮軍は、主人公の父親を目の前で射殺するなど、血も涙もない集団として描かれ、全体としては見覚えのある往年のB級アクションといったノリである。
「エンド・オブ・ホワイトハウス」(’13)も、北朝鮮の武装集団がホワイトハウスを占拠するという侵略モノだ。韓国首相の警備部隊を装って侵入して大統領を人質に取り、第七艦隊と在韓米軍の引上げを要求するというこれまた荒唐無稽過ぎる設定。逆にバカバカし過ぎて笑えてしまうが……。
◆北朝鮮が舞台の「グーニーズ」!?
実録ベースの戦争映画を除くと、北朝鮮が悪役として初めて登場したのは意外と古い。四半世紀以上も前に製作されたアメリカ映画「レスキュー」(’88)がそれだ。
在韓米軍の特殊部隊が北朝鮮に潜入中に北朝鮮軍に発見されて拉致され、その特殊部隊隊員の息子達が救出のために北朝鮮の収容所を襲撃するという「グーニーズ」に「コマンドー」を足して2で割ったような冒険活劇だ!
フィクションにしては北朝鮮の村や収容所(当然セット撮影)はよく出来ていて、変な話、今のハリウッド映画よりはまだましな描き方をしている。さほど両国の関係がギクシャクしていなかったせいか、それとも単なる無知のせいか……。
現在、VHS版が残っているだけなので、この「ザ・インタビュー」騒動を機にDVD化を望みたいところだ。
◆栄養失調のため飼い犬を食べる悲劇
さて、現実に近い路線のものに絞ると、やはり隣国・韓国が製作した映画になるだろう。
ある親子が北朝鮮から脱出するまでの軌跡を描いた「クロッシング」(’08) は、そのなかでもイチオシの作品だ。多くの脱北者から話を聴いて徹底的にリアリティを重視し、北朝鮮の人々のごく普通の日常生活を映し出している。
栄養失調のためなくなく飼い犬を食べるシーンは切ないものがある。(良い子は観ないように)
同じ韓国映画の「JSA」(’00)も捨てがたい。
韓国軍や米軍を中心とした国連軍と、北朝鮮軍の兵士が共同で警備を行なう軍事境界線周辺が舞台の作品で、思いがけず仲良くなってしまった南北の兵士達の交流とその破局が描かれる。
アメリカ映画がエンターテインメントとして面白半分に商品化している一方で、韓国映画は南北分断の悲劇を見据え、そこに物語としての可能性を見出している。
この落差は色々な意味で興味深い。
話は変わるが、「ザ・インタビュー」と同時期に全米公開され、15倍の興行収入を稼いだ「アンブロークン」(日本公開未定)は、日本兵が主人公を拷問しまくる(!)悪役として登場するマラソン選手の伝記映画だ。
たかが映画とはいえ、対岸の火事ではない。 <文/真鍋 厚>
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