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救急車出動率がダントツで高い月は? 救急医療「東京ルール」がたらい回しを解消していた

救急車 無事に仕事始めを迎え、ぼちぼち新年会ラッシュとなるわけだが、お正月気分が抜けきれていないということもあり、くれぐれも飲み過ぎには注意したいところだ。実は、年初めの1月は救急車の出動率がもっとも高い月でもある。東京消防庁が公表している「月別の救急搬送人員」(2013年度)を見ても、2番目に多いとされる12月が76人であるのに対して、1月は実にその3倍に当たる227人の搬送者を出している。もちろんお正月シーズンであるため、餅などを喉に詰まらせる事故で救急車を呼ぶケースが上積みされていると思われるが、「3倍」という数字だけ見ると、いかに1月が突出しているかがわかるだろう。都内の病院に勤務する医療関係者の一人が話す。 「餅などによる事故が多いのは言うまでもなく、年末に引き続き酒席も増えるため急性アルコール中毒を引き起こして救急搬送される事例は少なくありません。加えて、1年を通してもっとも寒い季節なのでお風呂場やトイレなどの寒暖差のある場所でヒートショックを引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞で搬送される方も多い。緊急と思ったら迷わず119番ですが、この季節は救急車の出動要請が多いということもあり、平均8分前後の現着時間を優に超えるケースも出てくる。東京都で新ルールの運用が始まって5年になり、いわゆる『たらい回し』と言われる搬送先選定困難事例も3分の1以下になりましたが、今以上に周知徹底を心掛けるべきでしょう」  彼の言う「新ルール」をご存じだろうか? 東京都民は言うまでもなく、都内の企業や学校に通うすべての人たちに向け、都は2009年8月、救急患者の「たらい回し」問題を解消するため新たなルールブックを策定した。その名も「救急医療の東京ルール」。東京都福祉保健局のホームページを覗くと、以下、3つのルールが掲載されている。 ・ルールI 救急患者の迅速な受け入れ ・ルールII 「トリアージ」の実施 ・ルールIII 都民の理解と参画
東京都福祉保健局

「東京ルール」については、東京都福祉保健局のホームページで確認できる

「I」は救急患者を受け入れる病院側のルールで、救急の現場で迅速に医師が対応できるよう、地域の医療機関が定期的に情報交換するなど互いに連携していくもので、新ルールが実施されて以降、協力体制は年々強固なものとなっているという。 「II」と「III」については私たち利用者側が是非とも知っておかなければならないルールで、「II」の「トリアージ」の実施とは、実際に医療機関に救急搬送されたとき、「緊急度」や「重症度」に応じて診察の順番を決めるというもの。軽度な症状にもかかわらず救急車を要請する人が増えたことで、救急窓口が診察を待つ人でごった返ししているときも多い。必然的に待ち時間の長さにクレームをつける利用者も出てくるが、これを「助け合い」の精神で重症患者を優先するなど診察順を入れ替えるというルールだ。一方、「III」は救急医療を都民の「大切な社会資源」と捉え、本当に救急車を呼ぶ必要があるのか? 判断に困ったときに電話相談できる「東京消防庁救急相談センター」(#7119)を設置。「適切な利用」を促している。 「いまだに救急車を呼べば待たずに医師に診てもらえると考えている人や、搬送先の病院で自分の都合ばかり言って病院スタッフと衝突する人もいますが、1月の救急医療の現場はてんてこ舞い。学校や企業での啓蒙活動などを通して東京ルールを浸透させられれば、本当の意味で緊急を要する患者が救われる環境が整うはず」(前出の医療関係者)  自分の家族、友人、そして、自分自身が、もし一刻の予断も許さない状況下で、スムーズに医師の診断を受けられなかったとしたら……? 今一度「ルール」を読み返して、助け合いの精神を養いたいところだ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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