更新日:2015年08月07日 22:01
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中国のシャドーバンキング問題再燃。ついに子供の「お年玉」にまで手を伸ばす

お年玉

もらったお年玉で理財を買おう!?(本文とは関係ありません)

 デフォルト危機が囁かれる中国の金融機関が、ついに子供にまで触手を伸ばし始めた。 「お子様のお年玉を有効運用しませんか?」  今年の春節から、ネット上では金融機関のこんなバナー広告が散見されるようになったのだ。 『長春日報』(2月28日付)の記事によると、そんな「お年玉理財」の多くは、一口100元ほどに設定されており、「上位10%は1万元以上のお年玉を得る」と謳っているという。  理財商品の乱発を温床とするシャドーバンキングは一旦、ほとぼりが冷めたように見える。しかし、米マッキンゼー国際研究所が今年発表したリポートでは、金融業界を含む中国の債務残高が過去7年で約3倍に増大しており、対GDP比で282%に達していたことがわかった。同研究所では、債務残高に潜む主要リスクのひとつとして、依然、シャドーバンキング問題を挙げている。  多くの理財商品では、ほころびが露わになっている。仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・49歳)は明かす。 「5年前に買った理財が満期を迎えたんですが、蓋を開けてみたら利回りは年2%ちょっと。定期預金なら年利4%はついていた。担当者に『5年前は絶対に儲かるって言っただろ』と責めたら、『今度こそ絶対に大丈夫です!』と、新たな金融商品を勧めてきて、悪びれた様子は皆無でした……」  一方、広州市の日系工場に勤務する長田幸弘さん(仮名・34歳)によると、理財という言葉を使わない、新しい高リスク金融商品も登場している。 「中国の各保険会社は『保険機能を備え、利回りが銀行預金以上』という商品を盛大に売り出している。付き合いのある外交員も、過去に自分が売った医療保険を解約して、そんな高リスク商品を買うように迫ってくる。しかし、保険会社は集めた資金を理財で運用するので、リスクは同じですよ」  深セン市の不動産会社勤務・岡本宏大さん(仮名・27歳)も、理財商品の勧誘は、すでにねずみ講の様相を呈していると証言。 「親しくない知人から『とても魅力的な理財がある』と突然、連絡が来ることがある。聞けば、投資先は内陸部の大型開発プロジェクトといい、他の人を紹介したら利率がさらに上乗せされるという仕組みでした。もう、完全にマルチなんですよね(苦笑)」  懲りない理財フィーバーについて、中国経済に詳しいジャーナリストの姫田小夏氏はこう話す。 「中国でもここしばらく、シャドーバンキングや理財商品を問題視するような報道は鳴りを潜めている。金融改革を進めるにあたり、マイナスイメージを払拭したい当局の意向が影響しているのかもしれません。しかし一方で、理財をはじめとする高利回りの金融商品に対する人々の警戒心が薄れている。そうしたなか、ますますアングラ化した金融商品も出現している。ネット上でも、高利回りを謳う怪しげな投資勧誘サイトがいくつも出現しています。多くは、金融の知識も経験もない素人が立ち上げた悪徳サイトで、突然サイトが閉鎖されたりといったトラブルも多発しています」  これほど末期的とは、今度こそデフォルト連鎖の危機か!? <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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