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ドイツ機墜落事故にLCC乱立との因果関係はないか?

エアバスA320型旅客機 フランス南東部で、ドイツのLCC(格安航空会社)ジャーマンウィングスのエアバスA320型旅客機が墜落。親会社であるルフトハンザが他社LCCに対抗するため、ジャーマンウイングスの拡大策を打ち出した矢先のことであった。  これまでLCCは低価格ばかりがクローズアップされ、安全面はあまり問題視されていなかった。  機体の安全性は冒しようのない大前提であるからだ。  航空業界に詳しいジャーナリストの向井通浩氏も「LCCだからといって機体の安全性が低いとは言えない」と話す。 「LCCの低価格実現には、その名の通りで極限まで徹底してそぎ落としたローコストオペレーションがあるからです。その為に、日本で就航し始めた頃には、安全面ではどうなのか? と心配する声もありました。 しかし欧米では厳しく整備基準や運航基準が決められていますし、実際にはレガシーキャリア(既存の航空会社)とLCCの間に安全基準に関する差や機体整備の差はなく、同様の運行管理と整備がされています。 今回のドイツの格安航空会社ジャーマンウイングスの場合は、グループ親会社であるルフトハンザが20年程度使用したものを引き渡して使っていましたが、エアアジアグループのように新品の機体を大量発注して使用している場合もあり、LCC=古い機体で運行とは限りません。 現在までに、LCCがレガシーキャリアと比べて死亡事故率が高いというような研究数値結果はまったく出ていません。また、今回事故を起こしたエアバスA320は世界で6000機以上が運行されている優等生の機体でした」 航空事情の世界的権威サイト、Airline Ratingsで見てもやはりLCCと死亡事故危険度に特別な因果関係があるとはいえない。 ・LCC http://www.airlineratings.com/safety_rating_per_airline.php?lc ・レガシー http://www.airlineratings.com/safety_rating_per_airline.php?fs  だが、昨年末のエアアジア機墜落事故も含め、LCCの墜落が相次いでいる状況ではやはり不安も募る。  向井氏は今後、LCCで事故が多発しうる原因は運営体制にあると指摘する。  なかでも最も懸念されているのは、LCC乱立と就航路線&便数増加による熟練パイロット不足の状況だという。 「日本でもパイロットが確保できずに発表就航路線がキャンセルで延期となったピーチエアの件は記憶に新しいところです。これを回避する為に、パイロットの定年が60歳から64歳へと順次引き上げられたり、操縦士と副操縦士のどちらも60歳以上でも良いなどの緩和措置が取られていたりします。 このようなパイロットの争奪問題が今後、沈静化するとは思えません。全体的なパイロットの収入は下がっているものの、LCCパイロットに関してはじりじりと高騰し続けています。日本ではその反省から、自前でパイロットを育成しようという動きも活発化しています」  さらに、LCCの普及はパイロットをはじめとするスタッフに高い負荷をかけている。 「次に運航コストとなる離発着代金や、特に機体駐機料金の節約です。このコストが高い日本の空港利用では、着陸して駐機から次のお客を迎えいれるまでの時間を40分目標と制限してコストカットを達成している事例もあります。 このような場合、当然のことながら人的ミスが増えてもおかしくない状況です。最近では同路線を飛ぶLCCとの競争にさらされ、レガシーキャリアとて以前のような余裕のある運航体制は難しい状況にある場合もあるでしょう」  パイロットの精神的余裕が削られ、運行に支障をきたす状況はJR西日本の福知山線事故を彷彿とさせるが……実際、回収されたジャーマンウィングのフライトレコーダーからは、パイロット間に何らかのトラブルが起きた状況が確認されている。パイロットが揉めて落下だなんて、客にとってはとんだトバッチリだ。  また、機体そのものと経営実態の両面において危険なLCCキャリアも存在するという。 「ミャンマーのエアバガンというLCCは非常に古い機体を払い下げてもらい、国内線や中国との国境線を飛んでいます。実際に政府や軍の高官を乗せた機体がミャンマー国内で墜落するなどしており、現地人の間では危険視されています。 経営には武器商人のテーザーが絡んでいます。また、あの『黄金の三角地帯』(タイ、ミャンマー、ラオスの3国がメコン川で接する山岳地帯)で麻薬王であった故クンサーの残した資金と人材により運行されたエアがあるとも。政府や利権絡みで敵対するゲリラにより迫撃砲で落とされたという憶測も飛んでいますが真相は闇の中です」  世界の空は確実にLCCがシェアを伸ばしており、それに伴い不幸なLCCの死亡事故の件数そのものが増える傾向も考えられる。  飛行機に乗る際は機体と経営事情の両方を鑑みる必要に迫られそうだ。 <取材・文/エイブリー・ヤス(本誌) PHOTO/Peter Broster
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