大王製紙・井川氏 マカオでヒルズ族とプレイしていた【後編】 「負けた人にはどんどんカネを貸して打たせる」

大王製紙の創業家出身、井川意高前会長(47)が、2010年5月~11年9月の間に子会社から無担保で借りたカネの総額106億8000万円。その使い道のほとんどがカジノだったということから、にわかに世間の注目を集めている。いったい、どんな博奕の打ち方をしていたのだろうか。日刊SPA!にてでカジノ小説『ばくち打ち』を連載中で、井川氏が主戦場としていたマカオのカジノに精通する作家・森巣博氏に、詳しい話を聞いた。 ←【前編】はこちら カジノのVIPルームは2種類に分かれる。1つ目はカジノハウス(以下、ハウス)直営の「プレミアムフロア」。2つ目は、部屋とディーラーのみハウスが貸し出し、カジノへのアテンド(収支決算も含む)は別業者が出入りしておこなう「ジャンケット・ルーム」というものだ。
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カジノのVIPルームに滞在時の森巣氏。階段、エレベーター、そして複数のベッドやトイレが設置されており、部屋というよりもさながら一軒の豪邸である

「井川氏はジャンケットでも打っていましたが、ジャンケット業者には『負けた人にはどんどんカネを貸して打たせる』という特徴がある。なぜならジャンケット業者は、客が勝った金額も負けた金額もハウスと折半する決まりとなっているから。客が負けてくれればくれるほど、ジャンケット業者としては実入りが大きくなるんです。そして、先ほども述べたように、借りたカネで打つようになった客はまず勝てない。だから『これはチャンス』とばかりにドンドコ貸すんですな」(森巣氏) ※このあたりの仕組みについては、森巣氏の連載小説『ばくち打ち』に詳しい ちなみに一部週刊誌では、井川氏が「子会社から借り入れたカネを中国経由でマカオに送金していた」と報道されているが、森巣氏はこれを「ありえない」と否定する。 「国内の口座に入れた資金を現地に送金することはまずありません。国内のカジノ口座に資金を入れておけば、そのカネを移動させることなく、マカオなどの現地で、それと同じ額をチップに換えてプレーすることができる。プレーを終えたらチップを換金し、勝ち金をつけた額(あるいは負けた額を差し引いた額)の証明書をもらう。そして帰国すれば、証明書と同じ額を国内の口座から引き出せる。こういう仕組みになっているんです」 なお、現地にみずから資金を持ち込んだ場合、帰国時に金額の申告をしなければならず、勝ち金50万円以上は課税の対象となる。ところがこの仕組みを利用すれば、課税を免れることができるというメリットもある。 最後に、手遅れかもしれないが、森巣氏から井川氏にアドバイスをいただいた。
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3000万円を勝利したのちの森巣氏。井川氏も同じ部屋に滞在したのであろうか

「博奕というものは、勝っていたとしても、負けていたとしても、前のことを考えれば必ずプレッシャーになる。一回一回、処女のごとく打たねばならん。これが博奕の要諦です(笑)」 日本でもカジノ解禁の流れが、いよいよ年内にも動くとみられている。「マカオやシンガポールなどの様子を見る限り、日本で実現すれば、おそらく3~4兆円規模の産業になる」(森巣氏)。日本において、今はまだ異世界のことのように思える今回の事件だが、カジノが我々に身近なものとなる日も近い。賭けるカネの桁は違えども、井川氏の轍を踏まないためにも、 “博奕の要諦”は今から胸に刻んでおきたいものだ。 取材・文/さかあがり
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