「また東スポか…」は間違い?同業の記者たちが舌を巻く夕刊紙の取材力
「また東スポか……」
「またゲンダイか……」
こんな言葉をネットで目にしたことがある方も多いだろう。東スポこと東京スポーツの記事や日刊ゲンダイなどの夕刊紙の記事をネタに、信じられないといった意味で使われる言葉である。特に多用されるのがプロ野球関係のネタで、移籍やチーム内の裏話などが配信されるとまとめサイトなどにはこの、「また東スポか……」「またゲンダイか……」という言葉が飛び交うのである。
では、そんな東スポや日刊ゲンダイなど、夕刊紙のネタをスポーツ紙や全国紙の記者はどう見ているのだろうか。話を聞くと意外な言葉が返ってきたのであった。
「一般の人は夕刊紙のネタをゴシップ、飛ばしと思ってますが、現場にいる我々からすると、『よくあのネタを書いたなぁ』と思うことも珍しくない。まぁ、確かに大袈裟な書き方や茶化して書いていたりするのは事実ですが、なんらかの事実に則して書いていることが圧倒的に多い」
こう語ってくれたのは、スポーツ紙のプロ野球の番記者をする記者だ。彼によると、夕刊紙は一般紙が書けないネタでも、ある程度ネタが取れていれば書いてしまうという。
「夕刊紙を読むと、大半が『関係者』が語った形で記事が書かれてますが、選手本人や監督や幹部の側近が話していたことが『関係者』という形で書かれていることはザラ。さすがにそこは配慮してるんだなぁと。でも、この『関係者』がネックなんですよ。関係者って書くことで、妄想記事だ飛ばしだって言われてしまうんですよね。
基本的に署名原稿ですが、記者の名前が書かれていない無記名の記事がたまにあって、そういうネタはけっこうな爆弾ネタだったりする。でも、まぁ、普段の行いと言いますか……。書き方が大袈裟だったり茶化して書いたりするから、そういった特大級のネタが埋もれてしまうんですよね(苦笑)」
この記者にとって、最も思い出深いネタは、2018年1月に東スポの一面を飾った「中日・岩瀬 人的補償での日本ハム移籍拒否」という記事だという。
「人的補償のプロテクト名簿なんて、絶対に表に出ない情報で、おまけに中日のレジェンド級選手がそれで揉めてると。こんな情報、どっから引っ張ってきたんだって、業界騒然ですよ。そこで我々も球団関係者や選手などに取材したんですが、かなり確度が高い。
じゃあ、なんで記事にしなかったんだってなりますが、岩瀬本人も球団トップも『プロテクト外して揉めたんですよね?』って聞いても、そんなもん絶対に『ハイ。そうです』なんて言うわけがない。でも、東スポさんがそれでも記事にしたってことは、かなり確証のあるネタを掴んでいたからです。さすがにあのレベルで“飛ばし”の記事だったら、中日と日ハムから出禁食らってもおかしくないですから。
仮にスポーツ紙の記者がこの情報をキャッチしていたとしても、出せなかったと思いますね。なぜなら、じゃあ誰が話して、誰が書いた?となる。もちろんメディア側も取材源の秘匿が原則だから言えるわけがないけど、そこは狭い村社会ですからね。
球団との関係は悪くなりますし、その後のことを考えるとなかなか書けない。当時、記者仲間で『あんなネタ、絶対に書けないよ。東スポはすごいわ』って。東スポの記者に『誰が書いた?』って聞いても、この時ばかりは何も話してくれなかった(笑)」

「関係者が語る」は実は選手本人や監督、幹部の側近!?
記者が唖然とした東スポのネタ
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愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。
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