早くも訪れた新指揮官・ハリルホジッチの正念場――ロシアW杯2次予選初戦ドロー
サッカー日本代表は16日(火)、ロシアW杯2次予選グループEの初戦でシンガポール代表と対戦し、0-0の引き分け。試合はおおかたの予想通り、序盤から日本が圧倒的に押し込む展開となったが、再三のチャンスを決めることができなかった。格下の相手に23本ものシュートを浴びせながら最後までゴールが遠く、まさかのドロー発進となったのだ。
https://nikkan-spa.jp/828368)、遅攻を強いられた中で迷いが生じ、またしてもボールを大事にしすぎる、消極的なプレーが顔を覗かせてしまった。メンタルの部分を含め、ハリルホジッチ監督が今後どういった指導をし、修正していくのか。ここからが新指揮官の本当の腕の見せどころだ。
取材・文/福田 悠 撮影/難波雄史フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129)
◆テストにならなかったイラク戦
ハリルホジッチ監督率いる日本代表はこの試合に先立ち、11日(木)にキリンチャレンジカップでイラク代表と対戦した際には、4-0と圧勝した。スコアだけを見れば上々の仕上がりとも思える結果だったが、残念ながら代表チームにとってはほとんど収穫のないゲームとなってしまった。
というのも、相手のイラク代表のコンディションが悪過ぎたのだ。主力メンバーが揃わなかった上にモチベーションも低く、DFラインは河川敷での草サッカーのようにガタガタだった。もちろん、サッカーどころではない政治状況の中で来日してくれたイラク代表にはそれだけでも感謝しなければならない。また、そもそもコパ・アメリカやユーロ予選等が開催されている最中に魅力的な試合を組もうにも限界があったのはわかるが、残念ながら選手の力量を見極めるのに十分な試合ではなかった。選手たちから「狙っていたことはある程度できたが、相手が相手だったので……」といったコメントが多く聞かれたことからも分かるように、どのプレーが、どの程度のレベルの相手に、どれだけできるのか、チームとしての仕上がり具合が不透明なまま、シンガポール戦を迎えることとなったのだ。
◆日本を徹底的に研究してきたシンガポール
ハリルホジッチ監督はW杯予選初戦前日の公式会見で「この試合には罠が仕掛けられている」と初戦を迎える難しさを話し、気を引き締めた。W杯予選初戦は確かに過去、ドイツ大会の予選で日本はシンガポールに苦戦を強いられ、前回大会の3次予選初戦でも北朝鮮に最後まで苦しめられた。とはいえ、FIFAランク154位のシンガポール代表は、いわば“圧倒して当然”の相手のはずだった。
地力で勝る日本は、序盤から本田や岡崎、香川らを中心にシンガポールを攻め立てた。早い時間帯に先制できればイラク戦のような一方的な展開もあり得ただろう。しかし、あと一歩のところで決め切ることができない。
対するシンガポールは日本をよく研究し、局面ごとに全員が集中したプレーを見せた。前半、右SBで先発した酒井宏樹がこの日最初のクロスボールを上げようとすると、対峙したシンガポールの選手は極端に縦を切ったポジションをとった。「あそこまで徹底して縦切りしてきたのには少し驚きましたが、こちらをすごく研究してるのがすぐに分かりました」と試合後、酒井宏樹が語ったように、酒井の巻いて入るクロスの軌道を研究してのプレーだということは明らかだった。
シンガポールはカウンターでチャンスを作るにはいたらなかったが、絶対に先にゴールを許すまいと、守備では懸命に身体を張り続けた。後半、日本は香川に代え大迫を投入したのを皮切りに、武藤、原口と3枚の交代カードを使い切り勝利を目指す。本田や岡崎が決定的なヘディングを放つ場面もあったが、GKイズワン・マフブードの再三の神懸り的なセーブに遭い、ゴールを奪うことができない。決定的だった槙野のヘディング、本田のFKもポストに嫌われ、終了のホイッスルを聞くこととなった。
◆遅攻を強いられたことで改めてあらわとなった悪い癖
「今日のような引いた相手だとボールを持つことが多くなるので、崩しの場面でもっと緩急をつけてテンポを変えていかないといけないですね。新体制になってから縦に縦にという速いテンポのサッカーをやっていたなかで、そこの切り替えが自分たち自身、しっかりとできていなかったと思います」(本田)
試合後、本田は試合をこう振り返った。シンガポールが自陣に極端に引いたことで、日本がボールを持つ時間が必然的に長くなった。しかし、ボールは回っていたものの「いつもと比べると各駅停車というか、横、横となりすぎてしまった」(槙野)というように、連動して相手を崩すような場面はなかなか生まれず、チャンスのほとんどがサイドからのクロスボールによるものだった。また、途中出場の大迫は相手DFライン上での駆け引きから何度も絶妙な飛び出しを見せたが、一度たりともそのタイミングでボールが入ることはなかった。
「クロスボールを上げるにしても、ただ上げるんじゃなくてもうちょっと出し手と受け手がお互いに意図しあえたら良かったかなとは思いますね。今のタイミングで出してくれれば……という場面は何度もありましたし、声をかけて修正しながらやっていましたけど、なかなかうまく引き出せませんでした。足元で繋ぎすぎたのも点を取れなかったことの要因の一つではあるのかなと思います」(大迫)
選手たちのコメントからも、迷いながらプレーしていた様子が見てとれる。
ハリルホジッチは就任以来、できる限りシンプルにゴール方向へボールを運ぶよう選手たちに要求してきた。縦パスを入れられる場面での横パスなど、消極的なプレーを選択しがちな日本の悪癖を矯正する狙いがあるのでは?と以前の記事にも記したが(
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