安保法制に揺れる自衛隊員のホンネ…「無関心派」が半分!? 残り4割は「やる気なし」
自民党推薦の憲法学者まで「違憲」と断じ、大荒れとなっている安保法制。通常国会の会期末までの衆院通過が困難となり、結論は来月以降に持ち越されることになったが……。今回の議論に自衛隊員は何を思っているのか? 複数の隊員たちに直撃してみた!
◆隊員の半分は無関心!? 4割は「やる気なし」でイケイケ好戦派は1割!
自衛官が戦地に派遣される――今国会では集団的自衛権行使を含む安保法制の議論が紛糾している。
もし日本と密接な関係にある他国が、敵から直接武力攻撃を受けた場合、日本も協力して他国を守らなければならない。これが集団的自衛権だ。
安保関連法案が国会で承認されると自衛隊員も他国の戦闘への参加を求められることになる。そもそも憲法で戦争放棄を謳うわが国が他国の戦闘に加担していいものかどうか。その賛否は大きく分かれる。
だが、その議論に実際に戦地へ派遣される自衛官たちの声はほとんど聞こえてこない。彼らは安保法制の議論をどうみているのだろうか。今回、複数の自衛隊員に意見を聞くことができた。
「特にお話しすることはない。もし『行け』と言われれば淡々と行くだけ。仕事ですので……」
東京・市ヶ谷にある防衛省内、航空幕僚監部勤務の1佐は安保法制に揺れる隊内の“空気”についてこう話す。1佐によると、防衛省・自衛隊内部では大きく分けて3つの捉え方があるという。
ひとつは「無関心派」。他国の戦争への参加も、東日本大震災のサイパ(災害派遣)と同じく“仕事”として淡々とこなすという考え方だ。自衛官の半分近くがこれに属し、自身もそうだと1佐は言う。
残り4割が、いざ有事の際には退職も辞さない「やる気なし派」、そして残り1割が戦場に率先して行きたがる好戦的な「イケイケ派」というのが1佐の見立てだ。
「そもそも自衛隊に入隊して長く勤める者は『体育会系・単細胞・負けず嫌い』という気質。上は防衛大学校卒の幹部から、下は高卒の兵隊までそう。難しい話は好まない。命令が出ればそれを実行する。その背景は関係ない」
とはいえ戦地に赴くとなると自衛官といえども人間だ。やはり思うところがあるのではないか。
「正直、他国の戦争に行けといわれて、『ハイ! 喜んで』とは言い難い。ただ私は18歳で防大に入学したときから“いざ有事”を決意している。でも、ほかの公務員と同じく安定した職と考えている隊員にとっては難しい選択になるのは確かだ」
では「難しい選択」を迫られる隊員はどうか。高校卒業後、数ある公務員試験に落ち、やっと陸上自衛隊に一般隊員として合格し、入隊したという3曹(34歳)は、他国の戦争への参加命令を「きっぱり拒む」と話す。
「自衛隊が戦争に行く? いいんじゃない? 俺が行かなければそれでいい。俺の周りにはそんなに張り切ってるヤツはいない。自衛官は勤務がキツくてもラクでも、同じ給料だぜ。だったらラクなほうを選ぶだろ」(第3師団・3曹)
自衛隊員は幹部(将校)、曹士(下士官兵)を問わず、皆、何がしかの専門職種を持つことを義務付けられている。陸自なら「普・機・特」と呼ばれる歩兵、戦車、大砲といった戦闘系のほか、会計、需品といった後方系の職種もある。先の3曹は職種選びの際、「有事の際、戦場に行かなくてもよい」「ラク」「退職後、民間企業でも通用するスキルが身につく仕事」を基準に後方系職種を選んだと明かす。
この3曹と同じ隊に勤務する女性隊員(2曹・28歳)も同調する。
「子供がまだ小さいうちに、『戦地へ行け』は非常識。ありえませんよ。もしそんな命令が来たら子供を盾に拒みます!」
女性2曹は続けてこう語る。
「ぶっちゃけ安倍総理の存在は私たち自衛官にとって困るんです。いっそのこと、共産党に政権を取ってもらいたいですね。日本でも外国でも戦争に行きたい人なんているわけがない。次の選挙では自民党には票は入れませんから!」
⇒【後編】『「竹島奪還!」イケイケ好戦派は1割』に続く https://nikkan-spa.jp/878880
取材・文/秋山謙一郎 鮎川麻里子 河鐘基(ピッチ・コミュニケーションズ) 写真/貝方士英樹

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