「竹島奪還!」イケイケ好戦派は1割…安保法制に揺れる自衛隊員のホンネ
自民党推薦の憲法学者まで「違憲」と断じ、大荒れとなっている安保法制。通常国会の会期末までの衆院通過が困難となり、結論は来月以降に持ち越されることになったが……。今回の議論に自衛隊員は何を思っているのか? 複数の隊員たちに直撃してみた!
⇒【前編】『隊員の半分は無関心!? 4割は「やる気なし」』https://nikkan-spa.jp/878879
◆まずは韓国、次は中国! イケイケ派の過激思想
無関心派とやる気なし派が大勢を占めるなか、一方では安保法制に賛成で、権限拡大を歓迎する隊員ももちろんいる。
「我々は尖閣の防衛はもちろん、竹島、拉致被害者をすぐにでも奪還しに行きたい。今回の安保法制は、我々のこうした思いを安倍総理が酌んでくれたものと理解している」(厚木航空基地・2曹・29歳)
さらにもっとストレートに「まずは韓国、次は中国だ!」(1曹・特別警備隊・38歳)と言う隊員もいる。一方で、安保法制でむしろ国内マスコミを懲らしめたいという意見の持ち主も。
中学校を卒業後、海上自衛隊第1術科学校生徒部で学び、19歳の若さで下士官に任命された“生粋の職業軍人”の某艦隊司令部に勤務する曹長(51歳)が語る。
「安保法制で自衛隊のさらなる権限拡大を望みます。戦後、マスコミのせいで自衛隊というものがタブー視されてきた。結果、隊員たちが萎縮して何も話せなくなっている。我が国の安全保障を歪めるような報道は“安保”の名の下に統制すべき。安倍総理にしていただきたいのは報道の検閲です」
なんと、報道の検閲すら望む声はイケイケ好戦派の隊員たちに多く、「自衛官はマスコミを苦々しく思っている。今回の議論でも反日的な意見が多い! 本当の敵はマスコミなんです」(前出の1曹)というコメントもあった。
威勢のいい彼らだが、こうした隊員はごく少数派にすぎない。護衛艦で電信員長職を務める曹長(43)はこう苦言を呈する。
「自衛官は政治に関与せずが大原則だ。靖国の英霊がどうのこうのと言うのなら、まず目先の仕事をきちんとこなせ。隊内で『使えないヤツ』ほど、今回の安保法制に浮足立っている。若い隊員にもいるが、職務よりも先に愛国心だの尖閣だの、何か自衛隊がおかしな方向に向かっているように思えてならない。現役もそうだが、元自衛官でも1年も持たずに辞めたヤツに限って威勢がいい」
この曹長は、安保法制に賛成だが、イケイケ派とは一線を画す。
「自衛隊はこれまで国民から正しく評価されていなかった。災害派遣で車両ひとつ動かすにも法の制約があった。今回の安保法制は他国との協力を円滑にすることが目的。戦争参加云々は飛躍した話ではないでしょうか。もし私に行けと命じられれば職務命令です、従うのみ。今回の議論が国民に自衛隊のことを知っていただくきっかけになれば、それで構いません」
自衛隊が戦地に赴くような事態になった場合、イケイケ派ではなく、今回の議論に冷静な対応をする無関心派の隊員たちが本当に活躍してくれるのかもしれない。
取材・文/秋山謙一郎 鮎川麻里子 河鐘基(ピッチ・コミュニケーションズ)
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