税務調査の現場で見つけた「抜きすぎ粉飾」とは?――東芝の不適切会計問題の今後
東芝の不適切会計問題で、今後はどのような事態に発展していくのだろうか。『国税局資料調査課』の著書で、元国税実査官だった佐藤弘幸さんによると、「まず、企業が粉飾を認める必要があります。自ら認めた(株主総会の承認)うえで、今期以後の決算で、前期以前の決算の修正を受け入れることを要するなど、粉飾決算の処理には少々手間がかかることになります」という。
「一般に税務調査の指摘事項には、利益の過少申告による『追徴』だけでなく、過大申告による『認容(マイナス)』もあります。厳密にいえば、追徴と認容の合計がプラスになった場合に追徴となるのです。法人税法第129条によると、粉飾分(過大申告分)は、企業が今期以後の決算で修正経理した後でなければ、所得減算を認めなくてもいいことになっています。つまり、法律上だけなら追徴分だけ払わせて、粉飾分(過大申告分)は見ないことができるのです。しかし、税務当局も行政サービスの一環であることに違いはないので、取れるものだけ取るというわけにはいきません。“できる規定”は税務署長に裁量があるので、実務の世界ではケースバイケースとなりますね」(佐藤弘幸さん)
粉飾による利益のかさ上げで多く払いすぎた税金の還付もあるかもしれないということだ。
「粉飾分を考慮した処分となると、“数字が減る”ことがあるんです。調査官は、これを嫌うのです。中小企業の調査現場では、調査初日に企業側から粉飾(売上・利益の過大申告)の告白がされることがある。調査担当者は、頭を鈍器で殴られたような気分となります」(佐藤さん)
ここで諦めてしまう調査官も多いそうだが、実は一つ注意が必要だという。
「それは、『抜きすぎ粉飾』というものがあるからです。抜きすぎ粉飾とは、事業年度の途中まで、架空原価などで逆粉飾(過少申告)していたのに、決算利益の見込みが予算より少なくなってしまい、銀行などのステークホルダーに面目がたたなくなってしまい、結果、架空売上の計上(粉飾)で辻褄合わせをすることをいいます」(佐藤さん)
利益を少なく見せていたら思った以上に少なくなってしまい、まずい事態になった。そこで、今度は逆に架空売り上げをして増やすという、意味のわからない行動に出る“抜きすぎ粉飾”があるそうだ。こうなると、しっかり調査をすれば追徴を課すこともできるので、最後まで調査することが必要なのだという。東芝の不適切会計問題は刑事、民事での係争に加え、税務の問題も山積みである。今後も注視していきたい。
【元国税実査官・佐藤弘幸】
1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、電子商取引専門調査チーム(現在の統括国税実査官)、統括国税実査官(情報担当)、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。いわゆる“マルサ”は国税局査察部のことであるが、“コメ”は国税局資料調査課のことで、「料」の字の偏からとった隠語。一般に課税調査などを行う国税局員は「調査官」と呼ぶが、資料調査課は「実査官」と呼ぶ。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
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