不適切会計の東芝に税金が還付される!? 「できるだけ少なくしたい」国税調査マンの心理
東芝の不正会計問題で、第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)は、「2008年度から2014年度までの6年間で1518億円の不適切な会計処理が行われた」といった調査報告書を提出した。東芝は1500億円以上の利益を粉飾したことで、必要以上に多く納税したわけだが、払いすぎた分は「更正の請求」をすることで取り戻すことができる。東芝が更正の請求をした場合、どうなるのだろうか。元国税実査官で『国税局資料調査課』の著書・佐藤弘幸さんに話を聞いた。
「仮に東芝から『更正の請求』がされたとします。数万円なら『机上処理』といって書類審査だけで還付処理して完結となることがありますが、東芝の場合は金額的にも社会的な注目度からも、机上処理では済まないでしょう。実地調査により、確認することになるはずです。確認後、通常は更正の請求が出て3か月以内に『処分』します。処分には、『更正の請求に対して理由がないから還付しない』とか『一部につき還付する』、逆に『増額更正(追徴になる)する』といったものがあります。しかし、東芝ほどの規模の企業を3か月で判断するのは難しいのが現実です」
実地調査で還付するとなっても、東芝の請求額どおり満額を還付するとはならない可能性があるという。
「一般的な話ですが、更正の請求が出ると、そのまま満額還付するというのは調査マンとしてはいかがなものか、となります。調査マンは『否認事項をたくさん見つけて、還付額をできるだけ少なくしたい』という心理が働くものです。というのは、後日、否認事項が出て追徴になると、更正の請求の調査を担当した人間は恥をかくことになるからです」
ちなみに、更正の請求をした額の満額を還付しない処分になった場合、「異議申し立て」により、当局と争うことができるという。東芝はどれほどの「更正の請求」を行うのか、またその請求に対して国税はどのような「処分」をするのか、注目したい。
【元国税実査官・佐藤弘幸】
1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、電子商取引専門調査チーム(現在の統括国税実査官)、統括国税実査官(情報担当)、課税第二部資料調査第二課、同部第三課に勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の税務調査を担当。退官までの4年間は、大型不正事案の企画・立案に従事した。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。いわゆる“マルサ”は国税局査察部のことであるが、“コメ”は国税局資料調査課のことで、「料」の字の偏からとった隠語。一般に課税調査などを行う国税局員は「調査官」と呼ぶが、資料調査課は「実査官」と呼ぶ。
<取材・文/日刊SPA!取材班 Photo by shibainu>
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