更新日:2017年10月16日 20:43
お金

海外カジノで活躍する日本人を直撃「エージェント希望者が日本から続々訪れている」

 アベノミクスの成長戦略の一環として、日本でも成立が間近に迫ったカジノ法案(IR推進法案)。観光立国を目指す日本としては、早期の法案成立が叫ばれているが、実際にカジノ運営の全体像を把握している日本人は少ない。  そんななか、海外カジノを舞台に活躍している日本人がいるという。カジノ大国化を目指すフィリピンのシティ・オブ・ドリーム、ソレイユといった有名カジノでジャンケット業務を手がける入月一好氏だ。日本カジノ成功の一翼を担うと言われるジャンケット。知られざる仕事内容について彼に話を聞いた。
カジノ建設ラッシュ

シティ・オブ・ドリーム、ソレイユなどフィリピンは現在、カジノ建設ラッシュだ

◆「ジャンケット」と呼ばれるカジノの仕事 「ジャンケットとは、簡単に言えば、世界各国の富裕層をカジノに招待し、VIP客として丁重にもてなすコンシェルジュのこと。カジノのVIPルームで快適にカジノゲームを楽しんでもらうことはもちろん、エアチケットやホテルの手配。滞在中にVIP客がゴルフをしたいと言えば、ゴルフをアテンドするなど何でもしますね」(入月一好氏)  カジノ側はジャンケット業者にVIPルームを提供。そこを訪れた富裕層がカジノゲームで落とすお金をカジノ側とジャンケット業者で分配する。ホエール(カジノで大金を注ぎ込むVIP客)と呼ばれる富裕層を呼ぶことができれば、それだけジャンケットの取り分も増える。そのため、前出のような至れり尽くせりのサービスをVIP客に提供するというわけだ。
入月一好氏

日本人では数少ないジャンケット業務を手がける入月一好氏。VIP客の招待だけでなく、カジノに興味を持つ日本人のエージェント育成にも力を注いでいる

「分配方法はいろいろありますが、主に客がカジノゲームに使った金額の1.8%がジャンケットに入るローリングポイントか、客がカジノゲームで負けた金額の20~30%が入るルージングポイント,実力のあるエージェント会社にはルージングポイント65%。例えば、後者の場合、客が勝てば取り分は0ですが、1000万円負けたら、200万~300万円がジャンケットの収益になるわけです。でも、ジャンケットで最も大きな利益となるのは、お金の貸付。滞在期間中、カジノ資金が底をついたVIP客を相手に10~15%の利息で貸しています。信用を担保にカジノ資金を貸すのですが、意外とアツくなる方が多くて……でも、みなさん富裕層なので、回収はさほど大変ではありませんね」  こうした富裕層をジャンケットは無数に抱え、莫大な資金が動くカジノの一翼を動かしている。 ◆マレーシアなど東南アジア系の富裕層をVIP客に  入月氏の案内で、フィリピンのニノイ・アキノ空港近くにあるソレイユのカジノVIPルームフロアを訪れた。1Fの一般客向けとは違い、落ち着いた雰囲気。カジノゲームに熱くなった中国人の怒号も聞こえない。ここに複数のジャンケット業者がVIPルームを運営し、自分たちが抱えるVIP客を招待する。そこで、VIP客たちは1回数万円のバカラ、ブラックジャックといったカジノゲームに興じるわけだ。入月氏は案内しながら「100万円のデポジットからVIP客にはなれますが、500万円以上の客からでないと航空券などの手配はしない」と飄々と話す。
ルーレット

残念ながら、VIPルームは撮影NG。ルーレットやバカラ、ブラックジャックなどさまざまなゲームを楽しめるが、VIP客なのでレートは高い。※写真はイメージ

 カジノのジャンケットは、そもそもマカオで生まれたシステムだ。中国では政府当局者のマネーロンダリングの場に使用され、悪いイメージがつくが、本来はカジノにVIP客を引き込む効率的なシステム。20億~30億円の金額をカジノ側にデポジット(預かり金)できる者だけが運営を許される。そのため、誰でも簡単になれるわけではなく、日本人ではあまり見受けられない。入月氏は日本人ながら、なぜジャンケットになることができたのか。 「フィリピンに来たのは21歳のとき。ブランド品の輸入ビジネスをはじめ、投資家向け不動産事業などを手がけていました。カジノ業界に参入したのは28歳のときですかね」  今まで培ってきた富裕層人脈を駆使することで、エージェント(ジャンケットの傘下)として頭角を現し、アジア最大手のジャンケット業者『黄金城』のディヴィット・キム会長に認められた。そして現在は、キム会長のビジネス・パートナーとして『黄金城』のプレジデントを任されるに至ったという。 「今は中国、韓国はもちろんシンガポールやマレーシアなど東南アジアの富裕層がVIP客として訪れてくれます。日本人はまだまだ少ない。でも、カジノ機運の高まりからか、日本からエージェント希望者がフィリピンを訪ねてきます。マカオやシンガポールのカジノが減益するなか、フィリピンカジノは今後、さらに成長していくはずです」  最後に、カジノVIPルームを後にしようとしたとき、ヘッドフォンとマイクを付けたカジノスタッフがテーブルに座り、ゲームに興じている姿が目についた。VIPルームでチップを賭けている彼らはいったい何なのか。 「こちらは最先端のフォーンベットと言い、VIP客が自宅からインターネットを通じてカジノゲームをしているんです。カジノスタッフは客の指示で賭けているだけ。リアルタイムで行われるので、“イカサマもない”と今人気を集めているんですよ。主流は、今やオンラインカジノに移りつつありますね」
カジノ

フィリピンでは、オンラインカジノにも政府がライセンスを発行。そのため、世界各国のオンライン会社が集まり、成長産業になっている

 莫大な金額が動く業界は日々進化を遂げるカジノ業界。そこには日本人にあまり知られていない世界が広がっている。 <取材・文/石井カイジ>
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