いきなり死体!スペインのぶっ飛んだ企業PR映画に仰天
「何だ? 君の国はあんなので駄目か! オッパイは出てなかったじゃないか。俺も限界はわきまえているんだ。あれでオッパイを出すことに成功していたら俺は表彰もので、闘牛士よろしく肩車されて映画祭のゲートをくぐっていたはずだ! そりゃあスプラッターは駄目だしポルノはアウトだ。でもここはシッチェスだからな。死体? エロチックな会話? でもメッセージは伝わったろう? それこそが目的ではないか。君だから秘密を明かすが、死体を出せって要求したのは会社側だったんだからな!(爆笑)」
スペイン、カタルーニャのリゾート地シッチェスで9日から始まったシッチェス国際ファンタスティック映画祭の1日目――。
大手ガス会社のPR短編映画をスペインではカルト的な人気のある俳優&監督サンティアゴ・セグラが制作した。セグラは『ビースト 獣の日』、『どつかれてアンダルシア』(ともにアレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品)に主演しているからご存知の方もいるかもしれない。
会見場に企業のお偉いさんとともに現れた彼は「依頼ものだから完全に自由なわけでもないし、企業のメッセージを伝えるという目的もあったし……」と、表現者としてやりにくかったというふうなことをこぼしていたが、真面目なガス会社の「エネルギーを節約しましょう」という大真面目なメッセージを彼がどう映画化したのか? 企業の綺麗ごとに押し切られた奇才……。よくある凡作の構造である。
なのに! ファーストシーンでいきなり死体である。夫を殺した女性と節約に命を懸けるアパート管理人の珍妙なやり取りに我われは爆笑の嵐だった。血だけではなくエロも盛り込まれてあった。
「私の“湯沸かし器”の手入れをしてほしいの」、「1年に一度手入れすれば十分ですよ」、「そんな。針がレッドゾーンなんです。だからお願い。後で“検査”に来て」などという妖艶な会話が出て来る。シッチェス風のエログロナンセンス。場内は抱腹絶倒腹。これのどこに企業PR映画ゆえの表現上の制約があったのか!?
冒頭のセグラの言葉は、「お金を出したのが日本の企業だったら、こんな内容は絶対アウトです」という記者の感想に答えたものだった。「質問はありませんか?」という司会者の問いに、周囲のスペイン人は誰も手を挙げなかったから、彼らにとっては「ああ面白かった」で済んでいたのだろう。だけど、昔は企業広告を作りコピーライトなどもしていた日本人である記者にとってはショックだった。
内容の方ではなく、このシナリオに大企業が平気で金を出したという事実が、だ。
この10分ほどの短編映画は企業のホームページで公開されている。(http://cine.gasnaturalfenosa.es/cinergia-segunda-edicion/cortos-cinergia-segunda-edicion/nivel-7/)
スペイン語だが、「節約しよう」というメッセージは間違いなく伝わる。動画投稿サイトにアップされたとしても鑑賞者の20%は企業のホームページを見に来ると言っていたからPRとしては大成功だろう。ホラー大国、アニメ大国として日本映画も多数出品されている馴染みのある映画祭だが、スペインと日本の距離はまだまだ遠い。
<文/木村浩嗣:ナノ・アソシエーション>

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