トランプの暴言、実は発言タイミングを緻密に計算している!?
シリア難民大量流入やISによる連続テロに悩まされた’15年の国際社会。そんな今、極右が世界的に台頭したり、大国の強権外交が幅を利かせている!
120人以上の死傷者を出したパリ同時多発テロは世界中の人々に衝撃を与え、国際社会の緊張は極度に高まりつつあるが、各国の政治状況にも不吉な変化をもたらしている。とくに不安や恐怖に訴えかける極右政治家や、強硬なナショナリズムを基盤にした強権政治家が勢力を強めつつある。
まず、’16年に大統領選挙を控えた米国を見ていこう。
最近では「イスラム教徒の入国禁止」を訴え、問題発言を繰り返す共和党指名候補のドナルド・トランプ氏が、異様な快進撃を続けている。12月14日、米モンマス大学が発表した世論調査では支持率が41%となり、共和党候補の中でトップに躍り出た。
出馬宣言以来、泡沫候補と見られてきたが、急速に支持を拡大できた背景は何か。オバマ陣営の選挙戦に草の根運動員として活動し、今回の大統領選ではヒラリー陣営に参加する明治大学教授・海野素央氏はこう指摘する。
「トランプ氏は支持基盤である教育水準の低い白人の中低所得者向けに『再びアメリカを白人の偉大な国にする』という隠されたメッセージを発信し、共感を得ている。失言・暴言が多いと叩かれていますが、感情に訴えかける言葉は、実は緻密に計算されたもの」
言い換えれば、不安や恐怖に便乗する炎上発言と白人優位主義を掲げ、共和党内有権者の支持を集めているということだ。一方、国際政治アナリストの菅原出氏も海野氏と同意見だ。
「トランプ氏は一定数存在する草の根的保守層を意識して発言している。欧州で難民問題がクローズアップされれば『ヒスパニック移民はレイプ魔』と発言し、パリでテロがあれば『イスラム教徒入国禁止』と打って出る。そのたびに支持率は上がっていますし、それぞれタイミングに合わせた発言は入念というしかない」
海野氏は「ムスリム批判が功を奏し、ライバルの保守派候補の票を奪えば、トランプ氏の支持率は共和党内で過半数を超え、党の支持獲得が現実になる」と予測。現在、民主党候補としてはヒラリー・クリントン氏が有力だが、一騎打ちになってしまえば、大統領選挙の行方は“神のみぞ知る”状態だ。
「現時点でトランプ氏は共和党候補者争いに勝つことしか考えていない。大統領になってからのビジョンは皆無では」(菅原氏)
もしトランプ政権誕生となれば、中東情勢はさらに複雑化するだろう。加えて明確なビジョンがないとなれば、世界で新たな戦争や混乱が生まれる可能性がある。
取材・文/SPA!世界情勢取材班
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