更新日:2012年02月08日 18:17
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「もしも神足裕司なら…」鳥越俊太郎、やくみつる、俵万智が考えた

2011年の世相を表す漢字は「絆」だった。同じく年末の風物詩、「新語・流行語大賞」でも候補に挙がっていた言葉だ。「絆」は、流行語大賞に選ばれた「なでしこジャパン」と同様、震災後の沈滞ムードに光を差し込んだキーワードと言えるだろう。
神足裕司

神足裕司氏

実はSPA!はこうした世相を表す言葉に物足りなさを感じている……特に流行語大賞に。大賞受賞にもかかわらず、なでしこメンバーが誰一人登壇しなかった(!)ことも1つの原因ではあるが、“もう1人”、本来いるべき人がいなかったのだ。週刊SPA!の連載「これは事件だ」や情報番組『ミヤネ屋』(読売テレビ)、TBSラジオ『小島慶子キラ☆キラ』などでお馴染みの神足裕司氏だ。 トレードマークはダービーハットと蝶ネクタイ、黒ぶちのウェリントンタイプのメガネ。口元に蓄えたヒゲとは対照的に、ハットの下にはツルっとした頭皮が隠れている。 時にひねくれ、あるときは過剰なまでに深読みし、独特の“神足節”を繰り出して人気を集めてきた変なオッサンだ。神足氏は、その独自の考察力と分析力、表現力から、「新語・流行語大賞」の審査員を長年務めてきたのだ。 だが、今年9月3日、出身地の広島から東京へ向かう機内で突如、容体が悪化。くも膜下出血で緊急入院を余儀なくされてしまった。度重なる開頭手術を経て、現在はペンを握れるまでに回復しているが、残念ながら「新語・流行語大賞」の審査員として復帰するまでには至らなかったのだ。 SPA!は、神足氏だったら「なでしこジャパン」「絆」以上に鋭く世相をえぐりとった「流行語」を選んだのではないか? と思わずにいられない。それは、長年、神足氏とともに「新語・流行語大賞」の審査員を務めてきた“同志”も同意見だった。 「神足さんは、みんなの暴走を止める役割を担ってくれた大事な人です。ものすごく広い目で、物事を分析できる人。とにかくいろんなことを知っている。ただ、社会風俗に対する関心が人一倍強いので、もし今回、神足さんがいたら……『あげぽよ』を選んでたんじゃないですかね(苦笑)」 こう答えるのは『新語・流行語大賞』の審査員であり、『現代用語の基礎知識』編集長の清水均氏。「あげぽよ」という、テンションアゲアゲな状態を指す若者用語を口にしながら、その表情は暗い……。なにしろ、神足氏との付き合いは約15年。『現代用語の基礎知識』内の社会風俗用語に関するコラムの執筆を毎年、神足氏にお願いしてきたのだ。 「本来なら別の識者にコラムの執筆をお願いするところだが、神足さんに代わる人はいなかった」 清水氏が話すように、11月半ばに発売された『現代用語の基礎知識2012年版』に、社会風俗用語に関するコラムはない。大宅壮一氏を執筆者にして始まり、神足氏に受け継がれていった同コラムは、今回初めて姿を消してしまったのだ。 「神足さんは独特の世界観を持っている人でしょ? 経済や政治、文化など幅広い知識をもった人でもある。震災以降は、何度か被災地に取材に行ったって聞いているから、震災・原発関連の流行語を選んだんじゃないかな? 『フクシマ50』とかね」 こう話すのは同じく審査員で、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏。今回は「3.11」が『新語・流行語大賞』トップ10に選ばれているが、「神足さんなら、3.11という言葉にすべてを集約することなく、もっと掘り下げて選んだでしょう」(鳥越氏)と分析する。 鳥越氏とともに審査員を務めた作家の俵万智氏も同じ意見。「独自の視点で、物事を掘り下げる人だから、きっと原発関係の象徴的な言葉を選んだと思います。『原子力ムラ』とか」というのだ。 他の審査員と一風異なる「流行語」を“妄想”するのは、神足氏とともに長年審査員を務めている漫画家のやくみつる氏。 「神足さんは先進的なものの見方をするんですよねぇ。そんな先、行っちゃうの? みたいな。流行語を選ぶスタイルは、“先行投資型”です。みんながあまり知らない言葉もドンドン推してくる。だから、僕はまったくやらないんですけど、ツイッターに絡むIT関連の言葉や社会現象に関連する言葉を選んだんじゃないですかね。あと、僕のイチ推しだった『セカンドバージン』(NHKドラマ)は、ほかの審査員の方々から賛同を得られませんでしたけど……神足さんだったら絶対、僕に同調してくれたと思います!」 とはいえ、やく氏の見立てには、こんな批判も……。 「やくさんは、鈴木京香さんに会いたい一心で『セカンドバージン』を推しただけ。横山めぐみさんに会いたくて『真珠夫人』(’02年4~6月にフジテレビ系列で放送された昼ドラで、横山めぐみがヒロインを演じた。’02年「新語・流行語大賞」トップテン入賞)を猛プッシュした“前科”がありますから(苦笑)」(俵氏) やく氏の暴走を食い止めるためにも、神足氏の復活が待たれる。 取材・文/池垣完
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