TPPで問題となるのは農業だけじゃない。著作権「死後70年」を受け入れて本当に良いのか?
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
がしがしと、11月公演の新作『サバイバーズ・ギルト&シェイム』の練習を続けております。「抱腹絶倒の悲劇」ですので、興味のある方はぜひ、ネットでググっていただいてチケットを。と、いうわけで、話は変わってTPPですわ。
11月にはTPP関連法案は一括成立の見通しだそうで、「日本の農業はどうなる?」なんてのが議論の中心ですが、じつは、「著作権」も大問題なのだと、どれぐらいの人が知っているでしょうか。
今、日本では作家が死んで50年たつと、著作権が切れます。パブリック・ドメインと呼ばれるフリーになるのですね。2016年の今年は、江戸川乱歩さんと谷崎潤一郎さんの著作権が切れます。ネットの「青空文庫」には、著作権が切れた作品がリストアップされ、みんな、無料で自由に読めるようになっています。
でね、アメリカは作者の死後70年なのです。
TPPを批准・参加するということは、無条件で「死後70年」を受け入れるということになるのです。
でね、僕も作家なので、どっちがいいんだろうと考えるのですよ。
そもそも、死後50年たって、商売になっている作家(例えば本を出版されている人)は、統計的に全体の1~2%だそうです。それ以外、ほぼすべての作家は、死後50年もたつと、ビジネスベースでは成立してないのです。
もともと、著作権が生まれた時、イギリスでは「著者の死後14年まで」でした。それが、ヨーロッパでは、クラシックの作曲家の遺族達の運動によって、どんどんと伸びるようになりました。
そして、アメリカでは、ぶっちゃけて「ミッキーマウスの著作権を守るため」と言われていますが、死後70年に現在、なっています。
これから先、じつは、もっと伸びるのではないかとも言われています。つまりは、ミッキーマウス関連の著作権を守るために、延々と伸ばし続けるんじゃないかという読みです。
それは、アメリカは「著作権・特許」に関する収入が、年間12兆円ほどあるからです。アメリカは著作権で莫大な利益を得ているのです。
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