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トランプを罵倒したデ・ニーロが一転「敬意を払う」。「クソ安倍」と言い続ける人は無邪気だ

 いまだ冷めやらぬトランプ大統領誕生の衝撃。現実を受け入れられないセレブも多いようだが、一方では態度を変える動きも出始めている。

反トランプのセレブたちが、次々と「受け入れる」発言

 歌手のマイリー・サイラスは、トランプ大統領を認めるとし、その代わりあらゆる人々に敬意をもって接するよう求めた。  カナダへの移住をほのめかしていた俳優のブライアン・クランストンも、「次期大統領が傷ついた我々の国をひとつにまとめてくれることを願う。心から彼の成功を願っている」(映画.com 11月10日配信)と語ったという。  そんな“転向組”の中で、最も象徴的な存在がロバート・デ・ニーロだろう。選挙中にトランプ氏を「バカ、豚、クソ、ペテン師」とまくしたて、「殴ってやりたい」とまで言って攻撃していた彼が、投票結果を受けて次のようなコメントを発表したのだ。
デ・ニーロ

ロバート・デ・ニーロ(c) Daniel Raustadt

大統領という地位には敬意を払わなきゃいけない」「彼がこれから何をして、実際に個々の課題をどのように処理していくのかを、われわれは注視していかなければならない」(AFP BB NEWS 11月11日配信)  手のひら返しと言ってしまえばそれまでなのだろうが、この言葉にはそれだけでは済まされない“原則”があると思うのだ。それは、デ・ニーロが正当な慎み深さをもって権力に向き合っているという事実による。
ドナルド・トランプ氏

ドナルド・トランプ氏 写真/Michael Vadon(CC BY 2.0)

 もちろん世界最高クラスのパワーを有する「アメリカ大統領職」を前にして平伏せざるを得ない現実もあるだろう。  しかしそれ以上に、単純な批判が権力者にとって栄養にしかならないという構造的な必然性に対する畏怖こそが、デ・ニーロの姿勢を変えたとは考えられないだろうか。  “憎まれっ子世にはばかる”が真理であるとすれば、トランプへの攻撃は彼を支援することと同義になってしまうのだ。トランプの右腕とされるスティーブン・バノンは、新大統領に向けられるあらゆる批判を読み替えて、反撃する際に燃料として使うだろう。  だから、無邪気で一義的な批判は厳に慎むべきものなのだ。
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安心して「クソ安倍」と言い続けられる日本
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音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4

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