晋平太×R-指定が語る「フリースタイルのはじめ方と上達方法」【フリースタイル対談・後篇】
MCバトルの最高峰・ULTIMATE MC BATTLE(以下、UMB)の全国大会を2連覇した経験を持ち、初の著書『フリースタイル・ラップの教科書』を発売した晋平太と、その後に3連覇を成し遂げたR-指定が対談。「中吊り広告を見てラップする」「テレビにラップで文句を言う」「サイファーに参加する」といった、自分たちが実践してきたフリースタイルの上達法を明かした。
――フリースタイルをはじめようと思った場合、最初はリリックをノートに書くことからはじめる人が多いんでしょうか?
R-指定:俺はフリースタイルより「CDを出せるようになりたい」という目標が先にあったんで、そうでしたね。そこは世代によって違う部分が大きいと思います。俺の頃は「ラップ」という大きな枠の中にフリースタイルがある……っていう感じやったけど、俺より下の子は「フリースタイルはじまり」の子も多いから。
晋平太:今は圧倒的に多いんじゃない? リリックを書くより簡単にはじめられるし。
R-指定:あと、リリックを書き溜めていた人の場合だと、曲に使うためにメモった言葉が、フリースタイルの場面で出てくるみたいのはあると思う。
晋平太:引き出しに入っている感じだよね。俺はリリックを書くことも、フリースタイルをすることも、どっちも大事な過程だと思うんですよ。「韻をキレイにカッコよく踏みたい」って場合なら、ビートを聞きながらリリックを吟味して、「何文字の言葉をどうハメたら一番キレイかな」とじっくり考えたほうが、韻のメカニズムが分かる。そして、それが体に染み込んでくる。逆にフリースタイルは、韻をキレイに踏むことだけが勝負じゃないから、「もっと自由にラップしたほうがいいな」とか、「韻にこだわりすぎるより、言葉をシンプルにしたほうが伝わるっぽいぞ」とか、いろんなことに気づける。そうやってフリースタイルで学んだことは、リリックを書くことにも生かせるし、逆のパターンで生きてくることもある。だから両方やったほうがいいんだよ。「よくそんなに韻を踏めますね」って言われることは多いんだけど、それも両方の作業の蓄積があって、そこで蓄積された言葉が頭のなかで繋がるからなんだよね。
――バカな質問ですけど、韻は思いついたけど、その間をつなぐ言葉が思いつかない……っていうことはないんですか?
晋平太:それは訓練すれば出てくるようになる。でも、韻を思いつくようになった先の段階じゃないかな。
R-指定:まず韻を思いつく脳みそになって、その先に繋げる言葉も面白くできるようになる……みたいな感じですよね。その段階の手前の人は、やっぱ韻だけは踏むけど……。
晋平太:「文章、繋がってねえじゃん!」みたいなね。だから、韻と韻をつなげる文脈のセンスとか、ムリのなさがスキルだと思うんですよ。文章が繋がっていて、意味も分かって、なおかつ4連発で韻を踏んでいたりするから、面白く聞こえるわけで。でも、文脈に無理があることで、ダイナミズムが生まれているような場合もあるんだけどね。コブちゃん(KBD a.k.a 古武道)※とかさ。
※1982年生まれのラッパー。ENTER MC BATTLEで複数回の優勝経験を持つ
R-指定:KBDさんは、文脈よりもインパクト重視だし、韻を踏む言葉の組み合わせ自体が面白いから、接続する文章も面白くなってくるんですよね。
晋平太:だから、例えば韻を踏んでいる2つの単語があって、「これでラップをしてください」って言われたら、俺とR-指定くんで全然違う内容になると思うんだよ。そこがスキルとか個性なんだよね。
――晋平太さんは『フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩』(イースト・プレス)の中で「中吊り広告を見てラップをする」「部屋で目に入るものでラップをする」みたいな練習法を提案していますが、R-指定さんはそういう練習はしていましたか?
R-指定:高校の頃はいろいろやっていましたね。テレビに出てくる映像に対して、文句言う感じでラップしたり、歴史の教科書に出てくる人名を暗記するために、韻を踏むラップを作ってみたり。でも、いざテストになると、韻しか覚えてなくて、「……こいつ、何したヤツやったっけな?」みたいな、ややこしいことになりましたけどね(笑)。
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