「東海テレビは、いつのまにか“猛々しい”イメージになっていた」プロデューサーが語る映画『ヤクザと憲法』撮影裏話
これまでにない“異色ドキュメンタリー”を次々と世に送り出す東海テレビのプロデューサー・阿武野勝彦氏。‘16年1月に劇場公開された『ヤクザと憲法』は、観客動員数延べ4万人を突破し、単館系ドキュメンタリー映画としては異例の大ヒットを記録している。
今回は、’17年1月2日にロードショーされる劇場作品第10弾『人生フルーツ』の伏原健之監督を交えながら、独自の視点で問題に切り込む東海テレビのドキュメンタリーについて語ってもらった。
――まずは阿武野さんが東海テレビに入社してから、ドキュメンタリーを手掛けるまでの経緯を教えてください
阿武野:最初はアナウンサーとして入社しましたが、向いていませんでした。滑舌が何ともならなかったし、頭に浮かんてもすぐに言葉にできないというのはアナとしては致命的でしたね。それで、ドキュメンタリーを作っている部署がたまたま僕のすぐ後ろだったので、7年後ですけど、上司が僕の志向性を察して人事異動してくれました。そうして、ドキュメンタリーの道に迷い込んだという感じです。
――一番最初に手掛けたドキュメンタリー作品は何でしょうか?
阿武野:テレビドキュメンタリーの『ガウディへの旅』ですね。サグラダ・ファミリアなどで知られる建築家のアントニ・ガウディの生涯をたどる番組で、ディレクターとして、延べ50日間のスペインロケをしました。番組内容はフリーハンドで、なぜかスポンサーにお金をもらいにいくところまでやりましたね。
30代の僕は「得も言われぬ」とか「そこはかとない」みたいな情感が大事だと思っていて、それをテレビでどう表現できるかを考えていたんです。しかし、40代でまたダム問題のその後を追っているうちに、取材対象である村人の怒りを背負うような気持ちで取材することになりました。気がつくと、電波少年の土屋敏男さんみたいに革ジャン着て、ズジズジと約束破りの「悪い奴ら」に直撃しに行くみたいになっていました(笑)。
――ドキュメンタリーの制作に関わったらキャラクターが180度変わってしまったと
阿武野:まあ、それが一つの転機だったかもしれませんね。他局があんまり触れないものに取り組むというスイッチがオンになったんでしょうね。その延長上に『ヤクザと憲法』はあるといえます。これは反響が大きかった反面、更に激しくレッテルを張られるようになったというか、過去に遡って「ずっと危ないものを手掛けてきた東海テレビ」というラベル一色に塗り固められた感じですね。
『ヤクザと憲法』 「暴排条例」は何を守るのか |
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