更新日:2018年04月26日 23:05
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オークションで自衛隊の武器が売られている謎

「自衛隊ができない30のこと 05」

オークションで自衛隊の武器が売っている謎とは?

陸上自衛隊HPより引用

 オークションで、自衛隊グッズをググっているとプレミアム商品として一般に流通している商品に交じって、「官品」とか「教本」とか「資料」といった「秘密」扱いのものが出されていることがあります。「官品」というのは国が自衛隊員に支給(貸与)する制服やベルト帽子などの装備品一式。隊員以外の人が紛れ込んでいてもその装備品の内容が少し違う違和感で見つけやすくする効果があります。軍隊が制服を着るのはハーグ陸戦条約や国際人道法で戦闘員と非戦闘員を区別するなどの目的とされています。簡単にコピーされては困りますから、自衛隊の制服(官品)は自衛隊員以外の人は買えない非売品となっています。  しかし、インターネットのオークションではその官品の制服や自衛隊の中の教科書―教範なども大量に売られています。冊子の一部が黒く塗りつぶされていたりしますが、部外秘などのスタンプがあったのかもしれません。説明書きをみると古本屋で売られていたものを買ってきたなどの記述がありますが、入手経路がなんであれ自衛隊にとっては外部の人間に渡っては困るものです。近年では自衛隊の教範などの大半は一冊一冊管理され、登録を義務付けられていますが、昔の規則のゆるい時代のものはまだまだでてきます。詳細に内容が書かれていないと聞きますが、秘密は秘密です。公然と売られているのは気持ち悪いものですよね。  また、これはさすがにマズイというものが出ます。  たとえば、【陸上自衛隊89mmロケット砲 M20実物ジャンク】など、「いったいどこからどういう経路でオークションにでてきたのか?」と首をかしげるものが出てくることがあります。模造弾などもたくさん出品されています。 オークションで自衛隊の武器が売っている謎とは? こういう武器や模擬弾などが出品されるということは、自衛隊のどこかにこういったものを調達できる場所があるのではと想像できます。武器類がジャンクとはいえ外にでてくるのはなぜでしょうか? 自衛隊は広大な演習場をもっていますし、フェンスで囲っていてもそれを超えて山菜などをとる人たちがいると聞きます。その人達を処罰したりする権限はありません。演習場のフェンスを人が超えられない強固なものにする予算もありません。監視カメラなどを設けて24時間監視するにも予算とそれなりの人員が必要です。そんな余分な予算は自衛隊にはありません。  自衛官以外の人が模擬弾や壊れたロケット砲を廃棄しているなかから持ち出したとしてもそれを捜査する権限は自衛隊にありません。内部の人間しか事情聴取する権限がないのです。自衛隊の権限と人員数では仕方ないのです。  特定秘密情報保護法に抵触するものがでれば、違法行為ですから、警察に通報すれば捜査してもらえます。しかし、特定秘密情報保護法が秘密としているものは秘密のなかでもごくごくわずかな高度な秘密にあたるものです。具体的にいえば自衛隊の行動内容や防衛に関しての航空写真や作戦の暗号、潜水艦や戦車・誘導弾の性能に関するものです。壊れたロケット砲は程度では銃刀法違反に当たるかどうか微妙なところです。
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自衛隊としては対処をしたいが…
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

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