雑学

「自衛隊の航空事故が多い」と感じるワケ

「自衛隊ができない30のこと 04」


 さる5月15日、陸上自衛隊の連絡偵察機がレーダー上から消息を絶ち、16日には搭乗していた4名の自衛隊員が遺体で確認されました。お亡くなりになった自衛官のご冥福をお祈りいたします。通常、民間の航空機事故に対するテレビ報道は、旅客や乗務員などの安否を気づかい、ご遺族の気持ちにも配慮した内容となりますが、自衛隊機の事故の場合には「どんな過失が考えられるか」「機体そのほかに不備がなかったか」という話に重きが置かれます。自衛隊員も同じ人間なのに、人の痛みのわからない報道ばかりでいたたまれなくなります。

 今回のフライトは北海道知事の要請によるもので、亡くなった隊員達は、状態が悪化し専門治療が必要な患者を函館市の病院から緊急搬送するという任務を遂行中でした。

 では、なぜ、自衛隊機に要請があったのでしょうか?

 天候不良で自治体等のヘリが危険で飛べないために自衛隊に要請が回ったのです。自衛隊は入隊宣誓で「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」と宣誓していますが、危険を伴う任務だったことは明らかです。

riri0401

離島が多い第72航空隊鹿屋基地の救難実績。海上自衛隊のHPより

 つまり、自衛隊に救難要請があるのは「ほかのヘリは危険で飛べないような悪条件のとき」なのです。

 自衛隊の航空機事故が多いように感じるのはなぜでしょうか。

 山岳地帯や海上の救助、緊急医療搬送などの第1報は、民間の医療機関や警察、海上保安庁などにいきます。しかし、現場に危険なガスが発生したり、天候などの理由で波が高かったり、風が強かったり、見通しが悪くなったりすると、一般のパイロットは危険を理由に飛びません。そういうときに、最後の手段として、もっとも危険な条件の救助作業に呼ばれるのが自衛隊の救難航空機なのです。事故に至る確率が格段に高くなるのは当然です。決してパイロットの技量や機体ばかりの問題などではないということを知っておいてもらいたいと思います。

 事故を起こしたことは確かに問題です。しかし、「命を救ってほしい」という要請があったとき、自衛隊機も他と同じように条件が悪いことを理由に応じるべきではないのでしょうか? 安全第一と考えるか、救えるかもしれない人の最後のチャンスと捉えるか。これはとても難しい問題だと思います。

 空の交通については国交省への報告義務があります。民間航空機のパイロットは航空計画をパイロット以外の人がつくりますが、自衛隊では多くの場合、パイロットがフライトプランや許認可関係の手続きをします(航空自衛隊は別動隊がフライトプランなどをつくるようですが、多くの場合、自衛隊のパイロットはほかの雑務や手続きを自分でやります)。フライトが終わった後もその報告をパイロット自身が上げなければなりません。

 たとえば8時間のフライトがあれば、任務の確認や天候や条件などのブリーフィング、フライトが終わってからの報告などでほとんど丸一日拘束されます。パイロットは長時間任務にさらされているのです。

 救難活動は本来の任務ではないため、通常任務に加えて救助任務がくるわけです。しかも難易度の高いフライトです。これを引き受ける自衛隊パイロットさんたちの負担はどれほどのものでしょうか。想像を絶します。

 自衛隊は最後の砦と呼ばれています。危険な任務でも、何とか助けてあげたい一心で要請を受けるのです。でも、ひとたび事故が起これば非難され、事故責任が糾弾されるばかりです。命を懸けて人を救うためにフライトした代償がこれでは浮かばれません。

次のページ 
壊した航空機などの損害について、責任を問われることも

1
2





おすすめ記事